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『読売新聞』2006年3月4日付

薬学部離れ、志願者半減の大学も〜6年制で負担増嫌気か


 大学受験シーズンは終盤を迎えたが、各地の大学で薬学部の志願者や受験者
数が大幅に減少し、関係者に波紋が広がっている。

 一番の要因は、薬剤師法の改正で2006年度の新入生から、原則として6
年制の薬学部を修了しないと、薬剤師国家試験を受験できなくなったこと。こ
こ数年の薬剤師人気を受け、逆に定員を増やしたところもあり、ショックを隠
しきれない大学も少なくない。

 04年の法改正を受け、国立大などが薬学基礎研究などを学ぶ4年制を残し
たが、ほとんどの大学は「薬剤師資格が取れなければ学生が集まらない」と、
6年制に切り替えた。私大薬学部の場合、4年間でも授業料の総額が800万〜
1000万円に上ったことから、大手予備校などでは、「6年制になれば、負
担増を理由に、志願者数は約3割減る」と予想していた。

 福岡大(福岡市)は、定員を前年度の180人から230人に増やしていた
が、一般入試の受験者数は前年度の2734人よりも4割少ない1622人に
減少。入試課では「6年制移行に合わせ、2学科を1学科に統合したため、併
願受験できなかったせいもあるだろうが、想像以上の減り方だった」と語った。

 昭和薬科大(東京)では、05年度に5615人だった受験者が、06年度
は5割以上減の2592人になった。入試課は「覚悟はしていたが、ここまで
減るとは……」と頭を抱えている。

 国立大学の薬学部でも事情は同じ。九州大(福岡市)では、05年度は4.7
5倍だった倍率が、06年度は4年制が2.56倍、6年制が3.79倍になっ
た。

 ドラッグストアの出店ラッシュなどで薬剤師の需要が増え、薬学部の新設が
近年、相次ぎ、志願者を取り合ったことも受験者数減につながったようだ。国
公私立を合わせ、02年度には計46校だった薬学部は、06年度は計66校
に増えた。

 九州保健福祉大(宮崎県延岡市)は、6年制への切り替えに加え、熊本と長
崎で私大薬学部の新設が相次いだことも受験生減につながると警戒していた。

 ▽地方受験会場を増やす▽長崎、熊本の受験生へダイレクトメールを増や
す――など努力はしたが、入試課は「志願者は現時点でも前年度より約3割減
の見通し。奨学金制度などを整備しないと(減少を止めるのは)厳しい」と話
している。

 大手予備校「駿台予備学校」(東京)の3月初めまでのまとめでも、ほとん
どの国公立大、私立大で薬学部の志願者が大幅に減少している。特に授業料の
高い私立大での減少が目立つという。

 薬学部の進学情報誌を出版している出版社「ネオリッチ」(東京都)では、
「これまでは資格ブームに乗って薬学部を志願していた学生もいたかもしれな
いが、6年間となると、本当に薬剤師を目指す人のみが受験するようになった
からだろう」と分析している。