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『東京新聞』2006年2月19日付

独立性の壁
国家公務員5%純減


 政府が今国会に提出する「行政改革推進法案」の柱となる国家公務員定員の
大幅削減で、裁判所や国会、会計検査院が対象から外れる見通しになった。い
ずれも内閣から独立した存在として、中央省庁の公務員とは同じ扱いができな
いためだが、小泉政権は思わぬ壁にぶつかった形だ。 (高山晶一)

 政府は昨年末に閣議決定した総人件費改革の実行計画で、日本郵政公社を除
く国家公務員の定員六十八万七千人を「五年間で5%以上純減(削減数から増
員数を差し引いた実質的な削減数)させる」という目標を打ち出した。

 実行計画は行政機関(中央省庁や出先機関)、独立行政法人、自衛隊に加え、
国会、裁判所、会計検査院、人事院(計約三万二千人)にも「行政機関に準じ
た取り組みを行うよう求める」としていた。

 ところが、内閣法制局との協議で、国会と裁判所の職員は、三権分立の原則
上、行政側の提出法案で純減目標を定めるのは無理があると判明した。

 国の予算執行をチェックする会計検査院も、憲法で内閣から独立した地位が
保障されており、内閣が純減目標を設定するのは難しいと分かった。

 このため、裁判所や国会、会計検査院の職員純減は、行革推進法案には盛り
込まれない可能性が高くなった。

 内閣に置かれている人事院も、国家公務員法で独立性の高い第三者機関と位
置付けられているため、「推進法案で政府が一方的に純減規定を設けると、独
立性が損なわれる」(人事院幹部)と反発。定員削減はあくまで自主的に取り
組む構えだ。

 政府は、国会や裁判所などが独自に定員純減を達成すれば、純減実績として
計上する方針だ。

 しかし、国会や裁判所などが定員削減に協力しない事態になれば、全体で5
%以上純減という目標を達成するには、ほかの機関の国家公務員を「余計に削
るしかない」(政府関係者)。

 しわ寄せを受けた省庁などが「不公平だ」と不満を募らせて定員削減に抵抗
を強め、政府が苦しい立場に追い込まれる可能性もある。