新首都圏ネットワーク
  トップへ戻る 以前の記事は、こちらの更新記事履歴

『読売新聞』社説 2006年2月14日付

[市場化テスト法]「管理委員会の機能強化がカギだ」


 公共サービスの質とコスト改善の決め手となるか。政府が、市場化テスト
(官民競争入札)の準拠法となる公共サービス改革法案を国会に提出した。

 今国会冒頭の施政方針演説で小泉首相は、効率的な政府の実現へ法案成立の
重要性を強調した。モデル事業として試行中の3分野から、地方自治体の窓口
業務や、国の統計調査業務などに対象を大きく広げる。

 自民、民主両党は、市場化テストの法制化を、昨年秋の衆院選で公約した。
法案にはなお議論の余地もあるが、審議の過程で改めるべきは改めたうえで早
期成立を図る必要がある。

 法案によると、市場化テストを進めるに当たって、首相は毎年、民間事業者
や自治体から対象事業の提案を募る。対象とする事業を選別し、基本方針をま
とめて閣議決定する。基本方針を受け、所管府省庁は入札の実施要項を定めて、
入札を実施し、落札者を決める。

 透明かつ公正に進むように、首相の諮問機関として有識者による官民競争入
札等管理委員会を設けて、監視させる。落札後も事業が契約どおりに実行され
ているかチェックさせる。問題があれば改善などを首相に勧告する権限も与え
る。

 耐震強度偽装事件で、民間検査会社が不正を見過ごしていたことが明らかに
なり、官業の民間開放を無条件に善とする考え方に、批判も出ている。

 民間が落札しても、そのサービスが効率性だけでなく、安全性を含む質の高
さを確保するよう、管理委員会を十分に機能させることが、成功のカギとなる。

 法案で論議を呼びそうなのは、「官民競争入札」だけでなく、官が参加しな
い「民間競争入札」も可としたことだ。

 官と民を対等に競争入札に参加させることで、官業の非効率、サービスの低
さを明らかにし、改革の推進力にする。それが法案の狙いの一つだったはずだ。

 官の不参加を認めてしまうと、これまでの官主導の民間委託と変わらなくな
るのではないか、との指摘もある。

 法案をまとめた内閣府は、官が参加しなくても、サービスの内容と実績、コ
ストなど詳細な情報開示を、実施要項で官に義務づけるので、官民競争入札と
同等の効果が得られる、と説明している。

 だが、法案によれば、実施要項を決めるのは、対象事業を所管する府省庁だ。
「効果」が保障されるか疑問がある。

 府省庁の抵抗を抑えるため「民間競争入札」の削除は困難、との見方もある。
削除が無理ならば、管理委員会に官の恣意(しい)的な判断を排除する権限を
与えることを法案に明記するなど、工夫が要る。