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『朝日新聞』2006年2月10日付

医師確保へ原発マネー 敦賀市が金沢大に2億円寄付へ


 福井県敦賀市は、不足している市立敦賀病院の医師を確保するため、派遣元
の金沢大学医学部へ研究基金として2億円を寄付する方針を決めた。2億円は、
同市内に原発を持つ日本原子力発電(原電)が同市に寄付する敦賀原発3、4
号機増設に伴う地域振興の寄付金の一部を充てるが、金沢大は「寄付と派遣は
別の話」と当惑気味だ。

 国立大法人化に伴って地方自治体から国立大学への寄付が02年からできる
ようになり、石川県の寄付(計4千万円)で金沢大が「生活習慣病講座」を開
設した例などはあるが、医師確保目的の億単位の寄付は異例という。

 現在、敦賀病院には39人の医師がおり、常勤医の多くは金沢大医学部出身。
04年に導入された国の臨床研修制度の影響で、昨春に内科の常勤医6人が辞
めて金沢に戻るなどしたため、穴の開いた外来診療時間は非常勤医を派遣して
もらうなどでしのいでいる。同市は欠員6人の補充を金沢大などに求め続けて
いる。

 一方、一昨年夏から敦賀原発3、4号機の用地造成工事を始めた原電は昨年
9月、増改築中の敦賀病院への協力として20億円を06年度までに寄付する
申し込みをし、同市が受けた。市は、20億円のうち2億円を寄付に回すこと
に決め、3月の市議会で予算案の可決をめざして市議への説明を始めている。

 同市は、大学病院側で使い道を柔軟に決められるよう、研究目的の基金とし
て寄付する方針。入金時期などは今後詰める。市幹部は「施設がよくなっても
医者が足りない病院はだめだという市民の声を聞いて決めた」と話している。

 金沢大医学部付属病院総務課の滝日豊文課長は「以前から敦賀病院へ医師を
紹介する努力はしている。寄付の話は直接は聞いていないが、もし寄付があっ
ても(敦賀病院の)医師確保と関係すると受け止めていない」と話している。