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『日刊工業新聞』2006年1月31日付

東京大学、支援先VBの株式取得で経営権を持たず早期に換金


 東京大学の産学連携推進本部はベンチャーから技術移転の対価や寄付として
株式(新株予約権、新株予約権付社債を含む)を受け取った場合、経営権は持
たずに上場直後などできる限り早期に換金する学内規則を決めた。値上がり益
を期待して、大学や関連する教職員が過剰な支援や操作を行うことを防ぎ、公
平で透明な立場を確保するのが目的だ。 国立大の株式の取得は、文部科学省の
通知で約1年前に可能となったが、公的な立場でありながら外部資金も増やし
たい大学の行動基準は決めにくく、規則の制定も東大が初めてとなった。

 大学がベンチャーから株式を受けとるのは、ベンチャーが技術移転の対価を
現金で用意できず、大学の特許活用が大企業に限られてしまうためだ。 ただ、
大学や教職員が特定のベンチャーに対し、共同研究推進を過剰に支援したりイ
ンサイダー取引にからんだりする危険性が高まる。 そのため、東大は経営には
参加せず、換金可能になったらすぐに株式を手放すことを原則とした。

 技術移転の先進である米国の大学も同様だという。 株式、新株予約権、新株
予約権付社債のうち、経営権はなく後に株式に換わる無償発行の新株予約権が
中心となる見込みだ。

 東大がベンチャー経営と距離を置くのはリスク対策の意味もある。 経営陣と
して連帯責任を求められたり、1株だけ東大に寄付して「東大のお墨付きベン
チャー」と触れ回られたりするのを避けるためだ。 技術移転の対価は株式のほ
か現金を組み合わすとし、ベンチャーが上場できなかったり倒産したりした場
合も、教員など発明者に還元できる仕組みを確保する。

 一方、国立大の承認技術移転機関(TLO)への出資は、両者の一体運営が
得策として以前から可能。 東大もすでに東京大学TLO(東京都文京区)から
株の寄付を受けて経営参加しており、今回の規則でもTLOは別の扱いとした。