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『科学新聞』2006年1月20日付

科研費 初の年2回公募へ

締め切り後の資格取得者限定
文科省が試行

 育児休業から復帰した研究者や新たに採用された研究者など、科学研究費補
助金の公募に間に合わなかった研究者を救うため、文部科学省は、18年度科研
費の基盤研究や若手研究に相当するものについて2度目の公募を試行的に行う。
科研費で年2回の公募が行われるのは初めてのことで、今回は応募したくとも
できなかった研究者が対象。文科省では3月には公募を開始し、5月までは申
請を受け付けたいという。

育児休業・産休復帰研究者ら救済

 科学研究費補助金は日本最大の競争的資金制度である。17年度実績ベースで
見ると新規応募9万6349件に対して2万3166件が採択されている。そ
のため、審査には膨大な時間と人員が必要だ。

 一方、総合科学技術会議は競争的資金制度について「年複数回の申請の受理
を検討」するよう求めており、例えばNEDO技術開発機構ではすでに、若手
研究者を対象とした産業技術研究助成事業で年2度の公募を実施している。

 こうしたことから、科研費でも年複数回の公募が求められていたが、1度目
の審査で落とされた研究者が再度応募するとなると、ただでさえ膨大な作業が
2倍になってしまうためデメリットが大きく、実現は難しかった。

 ただし、複数回公募をした方が研究者にとってのメリットがある場合はやる
べきだという意見も強いため、文科省は科研費の公募時点で申請資格がなく、
その後、応募資格を取得した研究者に限って申請を受け付けることにした。

 対象となるのは、昨年10月21日の電子申請の締め切り日以降に、科研費申請
資格を得た研究者。具体的には、育児休業や産休などから復帰した研究者、外
国で研究をしていて4月から日本の大学に採用になった研究者など、科研費に
応募しようと思っていてもできなかった研究者だ。

 予算としては特別研究促進費15億円を充てる。研究費の規模や内容は、基盤
研究A・B・C、若手研究A・Bを想定して、次年度継続する場合は、各種目
で申請することになる。3月に公募開始、5月に締め切る。9月には研究費を
交付できるという。

 審査は通常の基盤研究等で行われている2段階審査方式で行う。申請数によっ
ては通常の公募より採択率が高くなる可能性もあり、そこで不公平感が生まれ
る可能性がある。また申請数が多すぎれば、審査が間に合わず、採択が大幅に
遅れることもある。こうしたことも含めて“試行”し、問題点を洗い出す。

 担当者は「いずれにしろ、やってみなければ分からないことが多い。まずは
やってみて、そこで実際に進めながら、考えていく」と話す。