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『科学新聞』2006年1月13日付

科技振興費増額と今後の対応

適正、合理的な研究費配分へ
府省横断システムをスタート

 まつだ・いわお 昭和12年5月19日生、岐阜県。東大法学部卒、通産官僚を
経て、61年初当選。文部政務次官、経済産業副大臣などを歴任、昨年10月に発
足した第3次小泉改造内閣で現職に就任。

 昨年12月27日、総合科学技術会議は小泉総理に、第3期科学技術基本計画に
ついて答申した。総額投資目標25兆円、女性研究者25%を目指すことなど、大
きな政府の方針が示された。新年を迎え、基本計画の推進役となる松田岩夫科
学技術政策担当大臣に、18年度予算、科学技術システム改革、研究者への期待
などを伺った。

――18年度予算について

 平成18年度政府予算案では、科学技術振興費は1兆3312億円。これは前
年度予算に比べて1・1%の増。一般歳出全体が1・9%減となる厳しい財政
状況の下、前年度増になっているのは、科学技術振興費と社会保障関係費だけ。
政府の最重要課題として評価されたものだと認識している。

 また、科学技術振興に寄与するその他の経費を加えた科学技術関係予算は3
兆5733億円と、前年度に比べわずか0・1%の減となっているが、一般歳
出が減っている中で横ばいといえる。科学技術振興費、科学技術関係予算とも
に、第3期基本計画の初年度としてはまずまずの予算確保ができたと考えてい
る。

 厳しい財政改革の時代に、科学技術に関しては予算を付けていただいたので、
逆に気を引き締めて、各省庁の連携強化や研究費の無駄な重複を徹底的に排除
するなど、適切な予算の執行管理を徹底するとともに、独立行政法人や国立大
学法人のアウトプットを見ていくという取り組みを強化したい。私も先頭に立っ
て実施していきたい。

――システム改革

 限られた資源を有効活用し、投資効果を高めるためには、科学技術連携施策
群の推進とともに、研究費配分における不合理な重複や過度の集中などの無駄
を排除する必要がある。

 13年度から内閣府が主導して、政府研究開発データベースを整備してきてい
るが、これをさらに精緻なものにして、18年度のできるだけ早い時期に、現在
の競争的資金にプロジェクト研究なども加えた情報を各配分機関が共有し、重
複等のチェックができるような府省横断的なシステムをスタートさせたい。

 大学の改革はそれなりに進んできてはいるが、さらに進める必要がある。特
に国立大学法人の運営費交付金については、国立大学法人等の科学技術関係活
動の把握・所見とりまとめを今年度から始めた。場合によっては、我々からご
意見を申し上げ、かつその内容を一般に公表して、自主的な改革を促していき
ます。

 具体的に言えば、東北大学は、総長裁量経費の配分方針を見直し、部局にお
ける教育・研究等に関する改革プログラム支援を重視する方針を導入。総長裁
量経費約19億円、総長リーダーシップ経費約13億円を確保し、21世紀COEや
先進医工学研究等のプロジェクトを積極的に支援している。また筑波大学では、
間接経費を競争的資金を獲得した研究者の研究環境の改善と、大学全体の機能
向上に活用するため、その研究者の研究科に50%、本部管理分30%、光熱水料・
保守経費に20%で配分している。

 科学技術関係活動の把握・所見とりまとめでは、こうした取り組みを知らし
めることで、他大学での活動を促進させ、必要に応じて意見を述べていく。い
ずれにしろ、貴重な財源が本当に有効に使われていくよう、大学にも自主的な
改革を促していきたい。

――基礎研究について

 基礎研究の重視は第3期基本計画の大きな柱の一つ。基本計画では、分野別
推進戦略の中で具体的な成果目標を設定することになっている。例えば、次の
5年間で大学・公的研究機関の中から結果として、世界トップクラスの拠点を
30くらい整備して、基礎研究をリードする。世界的な飛躍知の約2割を生み出
していくことを目指す。基礎研究を発展させていくため、そうした目標をこの
3カ月で作りたい。

 また、人材の育成は基本計画の大きな考え。若手研究者や女性研究者などが
活躍できる環境を作ることが重要だ。

――研究者への期待

 社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術というのが、第3期基本計
画を貫く姿勢。科学技術の研究活動にしても、社会・国民から独立して存在す
るものではなく、広く社会・国民に支持されて、初めて科学技術の発展がある。
これを担うのは研究者の皆さん。

 自分の研究活動の内容や成果を、社会・国民にわかりやすく説明することを、
ぜひお願いしたい。

 そのために、競争的資金制度においても、研究費の一定規模、こうしたアウ
トリーチ活動に使えるように制度を改善する。研究者の皆さんのこうした活動
を通じて、国民が科学を身近に感じ、理科離れも起こらないという形にしたい。