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『毎日新聞』茨城版 2006年1月21日付

ニュースプリズム:地域と連携強める大学 ヒト・モノの宝庫、活用図る /茨城

 ◇生き残りへ独自性発揮

 「研究」「教育」に並ぶ第3の柱として「地域連携」を掲げる大学が増えて
きた。県内でも茨城大を筆頭に、多くの大学が地域の産業界や自治体との連携
体制を強めようとしている。今なぜ、地域連携なのか。背景を探った。【須田
桃子】

 ■「お宝」の公開

 「ここ(茨城大)にあるのが奇跡のような作品。常設の施設をつくり、地域
の人も閲覧できるようにすべきだ」

 昨年11月30日、水戸市文京2の茨城大で開かれたシンポジウム「茨大は
お宝がいっぱい!」。教育学部の小泉晋弥教授は、スクリーンに木村武山の最
高傑作とされるびょうぶ絵「小春」を映し出し、こう断言した。貴重な美術品
のほか、国書や漢籍、「太閤検地帳」の現物をはじめとする古文書……。シン
ポジウムでは、同大に眠る数々の貴重な所蔵品が紹介され、研究・教育で活用
したり、地域に公開する必要性が話し合われた。同大図書館では「お宝」の特
別公開もあり、教員自ら、訪れた一般の参加者に解説する姿もみられた。

 ■自治体や銀行と協定

 シンポジウムを企画したのは、人文学部内で04年に発足した地域連携委員
会。担当の佐々木寛司教授は「大学の文化的資産を媒介に積極的に地域社会と
かかわり、共生を図りたい」と話す。

 茨城大は今、全国で最も熱心に地域連携に取り組む大学の一つだ。04年9
月に地域社会からの寄付金の受け皿となる社会連携事業会を設立。昨年4月に
は事業をコーディネートする地域連携推進本部を発足させ、体制を整えた。茨
城産業会議や水戸市など4市町、常陽銀行などと次々に連携協定を結び、大学
公開や公募による16の提案型プロジェクト、学生のアイデアを採用する学生
地域参画支援プロジェクトを実施している。

 ■背景に独立行政法人化

 こうした取り組みについて、三村信男・地域連携推進本部長は「04年4月
の大学の独立行政法人化が一番のきっかけだった」と振り返る。「我々が自立
してやっていくためには、やっぱり地域に根を張らないといけないと考えた」。
法人化の約3年前には、遠山敦子文部科学相(当時)の主導で、国立大学の再
編・統合を推進する大学改革案「遠山プラン」が発表され、実際に福島大との
合併話が持ち上がったこともあった。互いのデメリットが大きく話は立ち消え
たが、危機感が高まったという。

 県企画課は「法人化に加え、少子化の影響で受験者数が入学定員を超えない
『全入時代』の到来を間近に控え、大学間の競争が激化している。学生の確保
や外部研究資金を求める動きが、地域連携への取り組みにつながった」と分析
する。生き残りをかけ、これまで以上に独自性を打ち出したい大学にとって、
地域連携は大きな鍵になると言えそうだ。