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『科学新聞』2006年1月1日付

科学技術振興費 増額へ
来年度政府予算案決定 文科省科研費 15億円増の約1900億円に

 平成18年度の政府予算案がまとまった。厳しい財政状況の中、ほとんどの予
算がマイナスになり、社会保障関係の義務的経費以外では、唯一、科学技術振
興費だけが増額となった。総合科学技術会議のSABC評価を受け、S16%増
額、A2%増額、B3%減額、C30%減額とメリハリを付けた上で、対前年度
比1・1%(142億円)増の1兆3312億円。第3期科学技術基本計画初
年度にあたって「厳しくとも科学技術には予算を付ける」という政府の姿勢が
あらわれた内容となった。

 文部科学省予算は、対前年度比4687億8800万円減の5兆1324億
1700万円。そのうち三位一体改革で義務教育国庫負担金の地方への移管分
4385億円を除くと実質的には、約302億円の減にとどまっている。

 競争的研究資金は全体として約24億円減の3584億800万円になった。
これは、17年度から競争的資金に組み込まれた原子力システム研究開発委託費
の電源開発特別会計分が約58億円の減少となったため。科学研究費補助金は15
億円増の1895億円。年2回公募の試行と若手スタートアップ資金が認めら
れた。戦略的創造研究推進事業は4億円増の480億円。科学技術振興調整費
は3億円増の398億円。

 国立大学法人への運営費交付金は、1兆2214億7800万円。効率化に
よる179億円減に特別教育研究経費の14億円増、退職金等の特殊要因増を加
えて、合計で102億5100万円の減となった。施設整備費補助金は31億5
600万円減の518億3900万円。また、特色GPや魅力ある大学院教育
イニシアティブなど、国公私立大学を大学改革支援については、29億3900
万円増の562億100万円が計上された。

 優れた研究者を確保するための予算は668億4300万円(52億6千万円
増)。振興調整費に「若手研究者の自立的研究環境整備促進」を新たに盛り込
むほか、科研費の若手研究を充実させる。さらに、女性研究者が出産・育児等
で研究中断したときの復帰支援や、女性研究者の活躍を促進する予算などが盛
り込まれた。

 大型基礎研究については7億9000万円増の936億7300万円。スー
パーカミオカンデや大強度陽子加速器計画、アルマ計画、すばる、大型ヘリカ
ル装置、総合地球環境学研究プロジェクトなどを推進する。

 イノベーションを創出するための産学官連携については、370億5600
万円を計上。知的財産戦略を強化するため、約59億円を使って、大学知財本部
やスーパー産学官連携本部を整備し、研究成果の特許化を促進するとともに、
知財分野の専門人材や目利き人材を養成する。また約312億円で産学官連携
を推進する。イノベーション創出につながるような本格的な共同研究への発展
を目指したFS活動の支援、大学発ベンチャーの創出・事業展開に必要な研究
開発の推進、産学官連携によるマッチングファンドの実施など。

 地域科学技術振興には、6億5800万円増の246億7300万円を計上。
知的クラスター創生事業約100億円、都市エリア産学官連携促進事業40億円
のほか、全国の研究成果活用プラザやJSTサテライトを活用し自治体、経済
産業局、大学、公設試などと地域イノベーションの創出を総合的に支援する新
規事業を約72億円で開始する。

 国家的に重要な基幹技術について核融合と海洋以外は増額になった。201
5年までに衛星、陸域・海域観測網を整備するとともにデータを統合的に収集・
解析する、統合観測・監視システムは230億2600万円(約35億増)。宇
宙輸送システムは127億円増の492億2600万円で、宇宙予算を4年ぶ
りに増加させた。「もんじゅ」「常陽」などの高速増殖炉サイクル技術は約40
億円増の347億3500万円。

 世界最先端・最高性能の汎用京速計算機システムの開発には、35億4700
万円を新規計上。1000億円を超える大型プロジェクトが認められたのは9
年ぶりとなる。また、現在の10億倍を上回る高輝度のX線レーザーによる世界
最高性能の光分析・計測システムを実現するX線自由電子レーザーについては、
125億3900万円が計上された。

 大臣折衝までいった私学助成は、経常費補助が0・6%増の3312億50
00万円、研究設備整備費等補助が7億7800万円増の77億7700万円
が認められたが、私立大学・大学院教育研究装置施設整備費補助は約29億減の
114億3400万円となった。