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『日本工業新聞』2006年1月5日付

インタビュー/JST・黒澤宏館長−「サテライト宮崎」開設


 科学技術振興機構(JST)が宮崎市の宮崎大学内に「JSTサテライト宮
崎」を開設した。九州では研究成果活用プラザ福岡(福岡市早良区)に次ぐ、
JSTの地域研究開発拠点になる。 宮崎県と鹿児島県を対象エリアとし、大学
など研究機関が持つシーズを民間との共同研究などで事業化を推進する。 黒澤
宏館長に運営方針や抱負を聞いた。

 ―JSTサテライト宮崎は05年12月に開設されました。 まだどんな事業
を行う機関なのかを知らない人も多いと思います。 事業内容や目的を教えて下
さい。

 「JSTが研究の地域密着度を高めることを目的に設置した。 対象地域内の
大学や工業高等専門学校、公設研究機関が持つ技術シーズと、企業との共同研
究を推進し、新製品開発や新会社設立など事業化を目指す。 事業化という出口
を重視し、マーケットニーズが見込める技術シーズを共同研究する」

 ―黒澤館長は昨年9月まで宮崎大学地域共同研究センター長を務めていまし
た。 業務内容に異なる点はありますか。

 「JSTサテライト宮崎自体が、共同研究費を助成できる点が最も異なる。
地域共同研究センターは産学連携の橋渡しはするが、研究費は企業側が負担す
る。 共同研究支援のメーンとなる『育成研究』は、毎年度2テーマずつ選択す
る予定で、年間3000万円の研究費を助成する。 JSTサテライト宮崎の研
究助成費は、3年後に約2億円となる見込みで、ほかの研究成果活用プラザや
サテライトと同規模になる」

 「共同研究に必要な人材と場所も提供する。 共同研究に採択された技術シー
ズに詳しい若手研究員を専任として1人付けるほか、宮崎大学地域共同研究セ
ンター内に専用の研究室を準備中だ。 これらの費用もこちらで面倒を見る」

 ―企業にとってはいいことづくめのように聞こえますが。

 「育成研究の研究期間は3年間。 だが、年度ごとに評価を行い、計画通りに
進んでいない研究テーマは翌年度には予算の減額や最悪の場合は中止もある。
厳しいことを言うようだが、最終目的は地域をいかに元気にするかということ。
宮崎や鹿児島にもキラリと光る研究テーマはあるはずで、それを発掘し、ダイ
ヤモンドのごとく輝かせたい」

 【略歴】くろさわ・こう 75年(昭50)大阪府立大院博士課程修了。 8
9年同大助教授、92年宮崎大学工学部教授、02年同大地域共同研究センター
長、05年10月JSTサテライト宮崎館長。 兵庫県出身、59歳。

【記者の目/地域活性化で事業化に期待】

 第三次科学振興計画は、これまでの一次、二次計画に比べ、研究後の事業化
を強く意識した内容。 黒澤館長が目指すところは、まさにここであり、地域の
活性化につなげる意欲が全面に出ている。 すでに05年度と06年度の研究テー
マ四つを採択した。 この中には宮崎県が特許を持つSPG(シラス多孔質ガラ
ス)が含まれている。 宮崎の特質を生かした技術だが、89年の特許取得から
すでに17年が経過した。 今回の共同研究期間中に一つでも多くの事業化につ
ながることを期待したい。(大分支局長・大櫛茂成)