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『北海道新聞』2006年1月5日付

起業家育成、感染症研究… 科学技術産業の拠点に 北大が新年度から整備


 北大は新年度から、科学技術ビジネスの一大拠点形成に乗り出す。札幌市北
区の通称「北キャンパス」に、「大学連携型起業家育成(インキュベーション)
施設」や鳥インフルエンザや牛海綿状脳症(BSE)などを研究する「人獣共
通感染症リサーチセンター」を建設する構想。一連の施設整備によって企業や
研究者を集積し、北大発の科学技術産業による道内経済の底上げを狙う。

 起業家育成施設は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(旧中小企業総合事
業団)の事業を活用し、面積は最大で七千平方メートル規模を想定。北大が研
究を進めている糖鎖工学などの先端技術を生かし、新薬開発や情報技術(IT)
分野で起業を目指す企業などに入居してもらう。同機構や道などが入居企業の
家賃を負担して企業を集め、最終的に道内に関連企業群の形成を目指す。

 人獣共通感染症リサーチセンターは現在、北大の創成科学共同研究機構の建
物の一部にあるが、新年度、近接する敷地に約二千平方メートルの独立した研
究棟を建設する。

 同センターは、鳥インフルエンザや新型肺炎(SARS)、BSEなど動物
と人の共通感染症制圧を目的に、二○○五年四月に開設した。文部科学省が国
内の研究拠点に指定し、研究内容は国内トップレベル。研究棟新築に伴ってス
タッフを増員し、研究規模も大幅に広がる見込みで、診断薬やワクチン開発に
弾みがつくと期待されている。

 さらに、政府が○六年度予算案の目玉として開発計画を進めているスーパー
コンピューター(スパコン)も、北大への誘致が進んでいる。一秒間に一京
(一兆の一万倍)回の計算をこなす世界最高性能のスパコン開発を目指すもの
で、夏にも設置場所が決まる。研究スタッフは百人規模を想定。世界最高速の
演算機能は新薬開発や人獣感染症の研究などに効果があり、多くの関連企業や
研究者を引き付けるとみられる。

 北大は、○三年度から文科省の戦略的研究拠点育成事業として「北大リサー
チ&ビジネスパーク構想」を進め、文科省が昨年十二月にまとめた中間評価で
は最高ランクの「A」を獲得した。新年度からは研究成果のビジネスへの応用
に重点を移し、一連の施設を構想の核とする考えだ。