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『四国新聞』2005年12月25日付

医学部入試に地域枠導入−香川大など


 地方の医師が不足する中、地域に根付いた医師養成のため、地方大学を中心
に、地元出身者の入試枠をつくるなど、人材確保の取り組みが始まっている。
国立大医学部の過半数で、地元出身学生の割合が30%未満にとどまる一方、
地元以外の学生は卒業後、県外に流出するケースが多いことが背景にある。文
部科学省も「大学の医学部は地域医療の中核。地元出身者が増えるのはいいこ
と」としている。

 文部科学省が医学部のある四十二国立大について一九九八年度から二〇〇三
年度までの入学者を調べた結果、地元出身者の割合は平均27%。最も割合が
小さい大学は9%で、10%台が十一、20%台十六。逆に50%を超えたの
は四大学だけだった。

 割合が大きい大学は大都市に多く、小さい大学は地方や大都市の周辺部に偏っ
ていた。

 信州大の調査では、医学部入学者に占める県内出身者の割合は11%と少な
いが、その約半数が地元で医師になった。これに対し、県外出身者は20%し
か地元に定着しておらず、地元出身者の方が地域医療に貢献していることが浮
かび上がった。

 同大医学部は、本年度入試から長野県内の高校出身者五人を合格させる「地
域枠」を新設。大橋俊夫学部長が、自ら高校に出向いて説明をしたり、手術室
に高校生を招いて体験実習を行ったりと、地域医療を担う人材確保に乗り出し
た。

 同大以外でも、卒業後に地域の医療機関で働くことなどを期待して、推薦入
試に地元高校出身者の枠をつくる大学が増加。滋賀医大や佐賀大が導入済み
で、〇六年度入試からの香川大ほか、島根大など八大学が導入を予定している。
札幌医大など地元入学枠を設けている公私立大もある。

 地域枠のほか地域に定着するよう促す教育プログラムを作る大学も。弘前大
は、卒業後に一定期間、県内の自治体病院で勤務を希望した場合、授業料や奨
学金を貸与。福島県立医大は、医学部生らがホームステイし、地域の生活への
理解を深める研修を計画している。

 全国で最も多く無医地区を抱える北海道の医療政策課は「地域枠の活用と並
んで、へき地での研修や奨学金で市町村の協力を進めるなど、地域で医師を育
てていくことが大切だ」としている。