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『科学新聞』2005年12月2日付

第3期基本計画 投資目標設定へ

小泉総理が前向き発言
総合科学技術会議

 第3期科学技術基本計画にも投資目標を設定すべきである。11月24日に開か
れた総合科学技術会議の基本政策専門調査会で、見解がほぼ一致した。また28
日の総合科学技術会議では、小泉総理が「科学技術予算は数少ない増やすべき
分野」と発言、その上で松田岩夫科学技術担当大臣と谷垣禎一財務大臣に折衝
するよう指示した。行財政改革で科技予算ももはや聖域ではないという厳しい
向かい風の中、17兆円、24兆円と続いた政府の研究開発投資目標を設定できる
のか、だとしたらどのくらいの規模になるのか、年末には決着する。

21日にも決着か

 財務省の中川主計官は「日本の官民合わせた研究開発投資のGDP比は群を
抜いている。一方、国民の科学技術に対する関心は低下。投資に無駄があるた
め、システム改革を進め投資効果を上げる必要がある。大学の競争力強化と言
うが具体的なプランは不明瞭。研究費の審査方法などをどこまで進化させられ
るかが課題」と指摘した上で「具体的な改革方策や目標なしに、単なる旗印と
して国民負担を増やすことはできない」と数値目標設定を否定。

 文科省の丸山科学技術・学術政策局長は「第3期は日本が少子高齢化に入る
時期。今後、資本や労働力には期待できない。イノベーションを通じて経済を
活性化する必要がある。投資が不可欠」。小宮山宏東大総長は「産官の投資が
多いというが、産業界は製品に近い最終的なところに特化して研究開発を進め
大学に基礎研究を期待。その傾向は今後も継続される。違いを無視してまとめ
てもいいのか」と反論。また大見忠弘東北大客員教授は「民間投資が近年増え
ているのは国の投資のおかげ。1期、2期での成果が産業界に移転された結果。
国が投資することが民間を強くする」。さらに庄山悦彦経団連副会長は「国が
これだけやる、と言わないと民間投資も含めて全体がシュリンクしてしまう」。

 「投資目標があった方が国民の厳しい目にさらされ関心も集まるため、投資
は明示すべき」(若杉隆平慶応大教授)、「中堅や地域を強化しなければ総合
力に欠ける。全体をレベルアップするためには、総額を増やす必要がある」
(垣添忠生国立がんセンター総長)、「投資目標は外国から若手を集めるイン
センティブになる」(戸塚洋二高エネ研機構長)といった意見が相次いだ。一
方、武藤敏郎日銀副総裁や中西準子産総研化学物質リスクセンター長は、投資
目標の設定に反対を表明。

 28日の総合科学技術会議では、こうした24日の議論を阿部博之議員が紹介。
「冨を生む唯一の手段。緩やかにGDPにリンクすべき」(吉野浩行議員)、
「企業はどんなに苦しいときでも研究開発をおろそかにすると10年後に駄目に
なる」(黒川清議員)、「出銭を減らす議論と富を生む戦略は別の議論。GD
P1%を目指すべき」(柘植綾夫議員)といった肯定論が数多く出た。唯一、
谷垣財務大臣だけが反対を表明。

 小泉総理は「科学技術の重要性は誰もが一致。予算は削減の一方だが、科学
技術予算は数少ない増やすべき分野。科技大臣と財務大臣は、よく折衝して欲
しい。科学技術は明日への投資であるから」と発言。

 この発言で、数値目標の決定プロセスが明確になったことから、12月21日の
専門調査会開催前にも両大臣での折衝が行われ、結論が出る可能性がでてきた。
阿部議員は「かなり前向きなメッセージだと受け取っている」と話す。