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『毎日新聞』2005年12月20日付

市場化テスト:美術館・博物館での06年度実施は見送り


 政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は1
9日、独立行政法人化した国立美術館・博物館への市場化テスト(官民競争入
札)導入について、06年度からの実施を見送る方針を固めた。日本画家の平
山郁夫氏や建築家の安藤忠雄氏ら有力な文化人がこぞって反対していることな
どから、世論の支持が得にくいと判断した。ただし、導入に向けた議論は06
年度も引き続き行う。

 規制改革会議は21日、こうした内容を盛り込んだ最終答申を小泉純一郎首
相に提出する。答申では「官業の民間開放」の一環として、美術館・博物館の
業務を、これまで以上に民間に委ねるよう明記する。ただ、新たに導入を目指
した市場化テストについては「更なる質の向上のための検討や工夫を速やかに
行う」と記述するにとどめる。

 政府全体の市場化テストの実績や、国より効率的に運営・管理している地方
自治体の美術館・博物館のやり方などを見ながら検討を続ける考え。

 この問題では、推進会議側が「質の高いサービス提供には競争が必要だ」と
市場化テストの早期実施を主張。これに対し、文部科学省は「文化芸術の振興
に市場原理はなじまない」と反対し、真っ向から対立していた。11月3日に
は平山氏ら文化人38人も「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧(きぐ)
する」との声明を出した。【坂口裕彦】