新首都圏ネットワーク
  トップへ戻る 以前の記事は、こちらの更新記事履歴

『日刊工業新聞』2005年12月16日付

東大など、エネルギー関連技術で来年度から一斉に産学共同研究


 東京大学の生産技術研究所は同大工学系研究科と電機・重工4社で運営する
「持続型社会研究協議会」で、3―5年で成果を出す産学共同研究を06年度
から一斉に始める。エネルギー問題を産学で議論し、自給率50%など「トリ
プル50」と呼ぶ2030年の挑戦目標をまとめたのを踏まえ、エネルギー関
連で複数の研究テーマを個別企業・教員で取り組む。 原子力関連産業振興を手
掛ける青森県との地域連携もテーマに挙がっている。 東大生研は技術の未来ビ
ジョンの議論を深めて研究に還元するこの手法を、ナノエレクトロニクス分野
でも展開するため、複数企業と検討を始めた。

 持続型社会研究協議会は04年3月に東大の生研、工学系研究科と石川島播
磨重工業、東芝、日立製作所、三菱重工業でスタートした。 これは生研が「未
来開拓連携」と名付けた新スキームで、未来社会をデザインしてそこから重要
な研究テーマを考える「バックキャスト」の考え方が特徴だ。 同協議会は30
年に(1)エネルギー自給率50%(2)エネルギー利用効率50%(3)化
石燃料依存率50%―が可能だとするビジョンを05年5月に発表し、日本経
団連や関係省庁へ浸透を図ってきた。

 次にトリプル50をベースに、協議会参加の企業・教員の興味に応じた個別
の共同研究テーマを走らせる。 例えば(1)では不安定な自然エネルギーを活
用するためのネットワーク制御、(2)ではヒートポンプや断熱技術など各種
プロセス技術の最適組み合わせ、(3)では地域エネルギーマネジメントや省
エネ技術の活用の都市システム―などが考えられる。 原子力施設を抱える青森
県とは、産業活性化策に向けた地場企業との連携を考えている。 これらは協議
会の全6者ではなく通常の共同研究型で進めるため、持続型社会の分野で多テー
マが同時に動きだすことになる。

 東大生研は「今回、未来ビジョン策定に向けて密度の濃い議論を複数の産学
で議論することの重要性を実感した」と話している。 そのため、この未来開拓
連携を他分野に広げ、東大内の他機関の参加も呼びかける。