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『科学新聞』2005年11月25日付

産学官連携サミット開く―連携は量から質へ―


 大学学長や民間企業の経営者、関係府庁の代表者など産学官連携に関わるトッ
プが集う『第5回産学官連携サミット』が14日、内閣府、総務省、文部科学省、
経済産業省、日本経済団体連合会、日本学術会議の主催により東京プリンスホ
テル(東京・芝公園)で開催された=写真。産学連携の事案が着実に増えてい
る一方で、1件あたりの研究費が欧米に比べ低いままの現状が明らかになり、
連携の在り方を"量から質へ"転換するなど新たな展開の必要性が確認された。

 産学官連携サミットは第1回の開催以来、日本の産学官連携の方向性をそれ
ぞれのトップが議論しながら模索し、より一層の推進を確認する目的がある。
産学官連携のあり方論に始まった同サミットも、回を重ねるごとに地域の産学
官連携など具体論にまで深まっている。今回の第5回では『産学官連携の新展
開の方向を、先進事例をもとに考える!』をテーマに、産学官連携が新たな局
面に入ったことを共通認識として議論が進んだ。

 まず基調講演で、産学官それぞれの代表が立場を表明した。松田岩夫科学技
術政策担当大臣が「今日の議論を第3期科学技術計画にも反映させ、強化した
い」とあいさつすると、岡村正経団連副会長は「産業界も10年先を展望した基
礎研究COEで日本の大学が強く連携する用意がある」と述べた。小宮山宏東
京大学総長は「日本は課題先進国だとし、それを解決するための膨大な知識を
生かすも殺すも大学の責任で、多面的なプロジェクトを進められる奥行きに信
頼してほしい」と強調した。

 さらに、産学官連携で先行している米国の現状分析を、ベンチャーキャピタ
ルの原丈人・デフタ・パートナーズ取締役が講演。「ソフトとハードが完全に
分離してしまった現状のIT産業なら、日本はソフト・ハード一体型のポスト
ITを産学官連携で取り組めば世界を席巻できる」とチャンスの到来を示唆し
た。

 パネルディスカッションでは会場からの質問が相次いだ。特に大学関係者か
らの指摘が多く、産学官連携推進の壁が独立行政法人化後の混乱にあることが
明らかになった。官が法律や制度、税制改革などの政策から連携強化を促すこ
とはもちろん、産学の研究現場レベルでの密な交流がより必要なことも確認さ
れた。

 なお、議論の最後には6つの柱からなる共同宣言(2面参照)が採択され、
黒川清日本学術会議会長は宣言に添えて「連携を考えるだけでなく、実行する
ことが今、関係者一人一人に求められる」と述べた。