新首都圏ネットワーク
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『科学新聞』2005年11月25日付

政府や社会へ的確に提言
浅島誠 東大院教授


 新制度のもとでスタートした第20期日本学術会議(黒川清会長)の初総会で、
組織運営および科学者間の連携を担当する浅島誠東大院総合文化研究科教授、
政府、社会および国民等との関係を担当する大垣眞一郎東大院工学系研究科教
授、国際的対応を担当する石倉洋子一橋大院国際企業戦略研究科教授の3会員
が、会長によって副会長に指名された。本紙では副会長就任に際しての所感を
インタビューし、今号から連載する。まず、最初は浅島副会長。

 副会長に指名されて身の引き締まる緊張感と責任感を感じている。 

 わが国の研究者が置かれている立場を考えると、これまでの学術会議がそう
した研究者を本当に代表していたのか、その辺りがまだ不十分であったと思う。
これからは新しい体制のもとで日本がどのような科学者コミュニティーを構築
していけるかが極めて重要なテーマとなる。科学者の総意をまとめられるかど
うかは、単に科学者内部だけの問題ではなくて科学者集団が品位を保ちながら、
政府や社会に対してもきちんとした提言を行っていけるかが鍵となる。そうし
たことができるアカデミックなコミュニティーでありたいと考えている。

 そのためには、これまでの学協会との関係も非常に大切で、そこでの意見を
くみ上げながら、日本の科学をどうしていったらよいのかに取り組んでいかな
くてはならない。会員はそれぞれの学協会に所属し、また背負っているわけだ
が、そうした立場から少し離れて、日本の科学はどうあるべきか、どういう方
向へ導いていったらよいのかをしっかりと示すことができるよう、広い立場か
ら物事を考えていく必要がある。 

 各会員の学協会におけるアクティビティは確かに重要ではあるが、各学協会
には、予算、若手人材育成、男女共同参画、社会に対する発信といった共通に
抱えている問題がある。さらに、国立大学法人化の影響や評価の問題など、現
在の変革が本当に研究の活性化につながっているのかを検討し、適切な助言や
提言をしていくことは、今後ますます重要になるだろう。 

 また、今日、科学者の規範が大きく取りざたされているが、前期でまとめた
ミスコンダクトの問題を土台として、科学者や社会に対してわかりやすい形で
発信していくことが大事だと思う。科学者が誇りを持ち、なおかつきちんとし
た規範に基づいて研究していることを示す、この説明責任は極めて大きい。

 今期は、企業を始めとして様々な顔ぶれがそろっているので、協力して国際
的にも優れたアカデミックなものにしていきたい。米国の科学アカデミーや英
国のロイヤルソサエティに相当する科学者コミュニティーでありたいと思って
いる。