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『日刊工業新聞』2005年12月8日付

視点/長野県で進む産学官連携−中小の独自技術を応援


 長野県で産学官連携の共同研究が着実に進んでいる。長野県工業技術総合セ
ンターの今年度は、共同研究67件、業務成果45件と微減傾向。 中小企業は
もっと活用してもよいと思う。 一方、信州大学の産学連携による共同研究は今
年度は、120件の増加傾向で、昨年の国立大学法人化では前年比3割増加し
た。 次の波を乗り切るため、さらに連携の活用と挑戦が欠かせない。(長野支
局長・木村豊)

 県工業技術総合センターでは「できるだけ中小企業を支援していく。 気軽に
訪問してほしい」と聞く耳の感度を高め、一層の利用を望む。 技術の高度複合
化に対応するため今年4月に、材料、精密・電子、情報、食品の4工業試験場
を融合化してコーディネート機能を強化した。

 ベンチャー創業者の経営や技術支援を最大5年まで行う「長野創業支援セン
ター」は、長野市10社、岡谷市11社、松本市5社をインキュベートしてい
る。 信州大学では、技術移転機関の信州TLOも活動している。

 現在、国内産業は業種間格差があるものの多忙の企業が多い。 しかし、これ
に安心せずに良い時にこそ、次の不況に備えておくべきである。 公的機関をで
きるだけ活用して相談して支援を受ける。 技術面だけでなく、人材育成、資金
融資まで各社とも強さをより強化して弱点を補強する。

 そして、他社にこれだけは負けないという、オンリーワン技術を育てること
が重要だ。 京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長が提唱する、人々に喜ばれること、
世の中に役立つことなど企業哲学を持って、社員育成や企業運営することも必
要ではないか。

 わが国の9割以上を占める中小企業が、経済成長で世界2位となった国内総
生産(GDP)や、生活レベルの上昇を担ってきたことは間違いない。 技術面
でもコスト面でも、大企業の縁の下の力持ちとして貢献してきた。 中小企業が、
独自技術やニッチ分野で活躍する場面はこれからも期待したいし、この分野が
中小が生き残る道なのではないか。

 「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」などの急激な産業成長
も、目を見張るものがある。 BRICsは生産基地から、やがて購買力をつけ
大消費基地となるだろう。 その過程で、日本の「ものづくり力」が持つ競争力
と、他国がマネできない高付加価値をビジネスに生かせる。

 ついこの間までの「モノづくりの国内空洞化」で、苦汁をなめた同じ轍(て
つ)を踏んではならない。 発展途上国の産業システムの中に、いかにビジネス
として入り込むかが重要になってくる。 柔軟発想で、独自技術開発に挑戦する
企業への応援が必要だ。 世界が抱える課題は多い。