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『毎日新聞』2005年12月7日付

東京大学:経済学部で知的障害者を初雇用


 東京大学経済学部の事務局で11月から、知的発達障害のある男性(20)
が働き始めた。東大で知的障害者が雇用されるのは全学部を通じて初めて。大
学での知的障害者の雇用は「遅れている」と指摘する専門家もおり、東大での
雇用を機に大学が知的障害者の働く場になっていくことが期待される。男性は
印刷などを任され、「給料で自転車を買い替えたい」と話しているという。

 東大では60人超の障害者が働き、国立大学に求められている法定雇用率
(2.1%)は03年度まではクリア。だが、昨年4月の法改正で未達成となっ
た。

 このため、同大のバリアフリー支援室から依頼された経済学部が知的障害者
の雇用を検討し、今年8月、同学部の松井彰彦教授らが東京都世田谷区立知的
障害者就労支援センターを訪れ仕事ぶりを見学。印刷やパソコンの技術を持ち、
事務職希望の男性が10月中旬から同学部で実習を始めた。

 実習で仕事が気に入った男性は契約職員として働くことが決まった。契約は
毎年更新しなければならないが、週5日、1日6時間(時給870円)働くこ
とができ、給料はこれまでの約3倍となった。

 男性は論文の印刷や製本、郵便物の仕分けのほか論文のパソコン入力などを
行っており、「日本語の入力より英語の方が変換がないので楽」と話し、充実
した日々を送っている。

 18歳以上の知的障害者は約34万人(00年)。福祉工場などで雇用され
ているのは約11万人(03年)いるという。ここ数年、障害者雇用のため施
設・設備などに配慮した特例子会社を設立する大企業が増え、雇用も増えてき
ている。

 目白大学人間社会学部の松矢勝宏教授(障害福祉論)は「大学は民間企業に
比べ知的障害者の雇用に積極的とはいえない」と指摘し、「大学でできる仕事
をどう見つけていくかにかかっている。無理だと思い込まず、知的障害者の働
く場についていろいろ試みる機運を高めてほしい」と話している。【有田浩子】