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附属学校教員の給与の件

 岩永様、皆様
          山室光生 (奈教大付小・全大教附属部長)

 岩永先生から、国立大学時代には公立から赴任した場合に給与が下がっていたが法人化後はそれがある程度改善され、ために法人化前からの在職者との間に給与格差が生じ、これは同一労働同一賃金の原則に反する事態ではないのか、とご指摘をいただきました。
 確かに「在職者との間に給与格差」が生じていると考えられ、同一労働同一賃金の原則に反していると言えるのだろうと思います。また、例えば本学給与規則には「(初任給)第12条 新たに採用する者の初任給は、その者の学歴、免許・資格、職務経験等及び他の教職員との均衡を考慮して決定する。 2 学長が特に必要であると認める場合には、前項の規定にかかわらず初任給を決定することができるものとする。」とあり、「他の教職員との均衡を考慮して決定する」に照らした場合にもどうなのでしょうか。
 恥ずかしいのですが、わたし以上に専門的な法律知識をお持ちの方のご判断を伺いたいところです。
 
 ご指摘の趣意と少し外れますが、現在は、わたし自身は、また全大教附属学校部としてもですが、現にある公立学校との給与格差をより問題視している段階です。本学においては次年度から公立学校からの赴任者の初任給が改善される予定なのですが、これは本学役員陣の英断だととても嬉しく受けとめています。(もちろん在職者は変化なしですから、給与格差が生じることになると考えられます。)

 ご指摘のように、国家公務員給与法・人事院規則では、公立学校から転勤した場合、俸給等が下がります。原因には主に二通りあって、俸給表のそのものの差と号俸差です。
 俸給表そのものの差は、府県によって実状が違いますが、国家公務員比のラスパイレル指数分(奈良県だとラスパイレル指数は103弱)です。
 より大きな額差を生むのは、号俸差です。この原因は初任給前歴計算に公立勤務時代の「特昇」「昇短」(1年に1号俸以上上がる仕組み)が加味されないからだと理解しています。文人給125号通知や給実乙第576号などによって格差を一定程度縮めてはいますが、それでも、下のアンケート回答にあるように、年齢によって若干の幅があるものの2〜3号俸(月3万円前後)下がります。生涯賃金では数百万円の差になりますから、人事交流・人材確保における大きな障壁です。

 この実状は、法人化後もほとんどの学校で変わっていません。国家公務員給与法・人事院規則準用がほとんどであり、その格差が是正された学校は極めて少数です。下のアンケートにあるように、回答いただいた83校中、「人事交流の円滑な実施のために人事院規則の準用以外に独自のしくみがある」のはわずか2校、次年度からの本学を加えても3校です。ただ、一方では「基本給格差は無い」との回答が17校からありましたので、より詳しく調査する必要もあると考えてもいます。

 基本給の他、共済給付などでも差がありますし、加えて法人化後は勤続年数の通算も問題となっています。退職金のための勤続年数計算は、国家公務員であれば公務員間の人事交流として自動的(法律によって)に通算されていたのですが、法人化後は法律が適用されなくなり、各法人と地方自治体との“確認”が必要になっています。それで、今まで聞いた事の無かった、県から退職金を受け取って(人事交流ではなく完全に退職して=もう県に戻らない)赴任されるケースも出てきました。これは公立大学と国立大学法人との関係においても同様だと聞いていますし、国立大学法人間でもどうなのでしょうか?

 いずれにしても下のアンケートにもあるように、賃金格差が原因となっての人事交流の滞りはわたしたちの大きな悩みです。こうした実態から、まず初任給格差の解消を実践的課題と考えているしだいです。現在のこの運動方針に問題などあるようでしたら、ぜひ全国の皆さんからご指摘いただきたいと考えます。


 以下は、全大教附属学校部会が春に実施した『労働実態アンケート調査回答集約』の一部分です。全国すべての附属学校(259校)にお願いし、83校から回答を寄せていただきました。全大教時報12月号には、附属学校の役割ともかかわらせてこのアンケートに関するレポートを載せていただくことになっています。そちらもご覧いただけると有難いです。


〔「学校」「校」には、幼稚園も含みます。〕
   
【問:人事交流について、あてはまるものすべて選んでください。】
・交流協定は、所在地の教育委員会とのみ結んでいる。〔70校〕
・交流協定は、所在地の教育委員会および必要に応じて他府県とも結んでいる。〔8〕
・交流協定は、どの教育委員会とも結んでいない。〔4〕
・交流年限をおよそ決めている。〔40〕
・交流年限を定めていない。〔20〕
・交流は比較的スムーズにすすんでいる。〔31〕
・交流は滞りがちである。〔13〕
【記述回答】
・本校は公立籍(小中校)と県立籍(養護学校等)からの異動があるが、勤務面・その他などの理由から本校への異動希望や推薦が少ない。特に県立籍からの異動は滞っている。
・大学内での交流があるが大学主導での交流であり、大きな不満がある。
・動きがない。
・附属養護学校と県立養護学校との間の人事交流が1つも成立せず滞った。
・県教育長と学長の協定書がある。
・法人化により一層労働条件が不安定になった。
・3年〜5年と交流前に言われて来ても7年・8年と長いこと居なければならない人が多数いる。(自ら望んで長い人は別)
・本人の希望を考慮して、決定している。
・附属小学校に勤務することで給料が下がるから。教育委員会が人材をあまり回してくれない。
・転任希望者(県から附属への)がほとんどいない。
・県の教育委員会と今年度より人事交流をしています。市には公立幼稚園がないことから小学校の教員が来ることになりました。クラスを持っている教員が5名しかいないのに、小学校の教員が1名来ることだけでも大変ですが(本人も)この先どんどんそうなっていくと専門の人がいなくなってしまいます。また管理職も今年度より小学校から来ました。幼稚園の専門性を考えた人事交流を望んでいます。
・交流年限を決めているが、県との様々なちがいについて、情報があまりに知らされていない。
・給与格差や労働実態のため滞りがちである。

【問:初任給決定について、あてはまるものを選んでください。】
・人事院規則の準用のみで決めている。〔56〕
・人事交流の円滑な実施のために人事院規則の準用以外に独自のしくみがある。〔2〕
【記述回答】
・給実乙第576号第6項の給与格差の調整を行っている。

 【問:基本給について、公立校園と比べてあてはまるものを選んでください。】
・基本給格差は無い。〔17〕
・基本給格差がある。〔56〕
【記述回答】
・2号俸程度低い。
・3号俸の違いがある。
・30歳で2号俸ぐらい低い。・月に2〜3万少ないらしい。
・もともと県費負担教員との格差があり引き継いでいる。プラス労働保険なども加わった。
・都立と比べて低い。
・昇給ペースが公立の方が早い。
・特別昇給分の号給が計算されておらず、その分が差となっている。
・給与格差調整後も、なお給与格差が生じている。
・給与表は公立と同じであるが、昇給のスピードに差があり公立の方が、早く上がる。
・過去の昇給短縮の結果。同年齢では公立校のほうが高いレベルにある。
・最も興味関心の高い事項であるが、正確には把握していない。また給与(賃金)以外にも福利厚生面なども含めて比較する必要性を感じている。
・低いが、各種手当を合計すると、あまり差はない。
・基本給格差は無いのではないか。

【問:退職金について、あてはまるものを1つ選んでください。】
・公立校園からの着任に際して、勤続年数が通算される。〔71〕
・公立校園からの着任に際して勤続年数が通算されないので、退職金を受けとってから附属に来る。〔4〕
・今は通算されているが、今後は通算しないことが検討されている。〔3〕