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『読売新聞』2005年12月2日付

若手研究者に独立の部屋やスタッフ、旧弊打破へ新事業


 画期的な成果を生む可能性を秘めた若手研究者が、教授の下働きに忙殺され
がちな大学研究室の旧弊を打破するため、文部科学省は来年度、大学の改革を
支援する新事業を開始する。

 若手に独立した部屋や専任のスタッフを与えて"一国一城の主(あるじ)" と
して活躍させ、教授を頂点にした階層構造に変革を迫る。

 科学技術分野の国際競争が激化するなか、新興領域に強い若手の育成は政策
上の重点課題だ。しかし、教授が率いる研究室に同居する助手は、研究を自由
に遂行しにくいのが実情。獲得した研究費も、教授の指示で一部を“上納”さ
せられるといった例まで指摘されていた。新事業は、日本の現状を嫌い海外に
流出した人材を呼び戻すことも狙っている。

 新事業では、大学や研究機関が、37歳くらいまでの若手研究者を数人ずつ
選び、教授や助教授から独立した部屋や設備、研究を手伝うスタッフを用意す
る。

 初年度は、こうした制度を作った大学を同省が約10か所選び、科学技術振
興調整費から計約25億円を交付する予定。3年目までに交付先を約30か所
に増やす。

 同省が2003年、国際的評価の高い日本人研究者108人に行った調査で
は、「滅私奉公的に教授に仕え、自分の能力が衰えるころ、その見返りに教授
にしてもらう。教授になれば、部下が仕えるというシステムが好ましく見えて
くる。新しい発想が生まれるわけはない」「指導力に問題のある教授についた
場合、人事や予算の面での縛りは悪い方向に働く」という回答があった。