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『産経新聞』2005年11月30日付

知財専門家 10年で倍増 育成へ3期工程案 政府戦略本部


 特許、商標、著作権など知的財産権の重要性の高まりを受けて、政府の知的
財産戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)は二十九日、官民で連携して知財専
門家の育成に取り組むことを決めた。特許庁の外郭団体で企業の知財担当者向
けの研修に取り組むほか、大学の法学部などで知財教育の拡充を図るなどして、
今後十年間で知財専門家の倍増を目指す。同本部が三十日に開く専門調査会で、
人材育成を段階的に推進するロードマップ(工程表)として提案する。

 政府は今年六月に定めた「知的財産推進計画二〇〇五」で、弁理士、知財に
詳しい弁護士、企業の法務担当者といった知財専門家の確保と育成を課題とし、
現在の六万人から平成二十七年に十二万人へと増やす目標を設定。これを受け
て同本部の「知的創造サイクル専門調査会」が具体策を検討している。

 同本部によるロードマップ案では、目標達成までを三期に分け、二十年まで
の「基盤整備期」に教育環境の整備を一気に進める方針。この期間に特許庁傘
下の独立行政法人「工業所有権情報・研修館」で民間企業向けの研修を開始す
るほか、日本弁理士会や、大手企業などで組織する日本知的財産協会などでも
専門家育成に取り組むよう提案する。

 二十四年までの四年間は「集中実施期」とし、人材育成を加速させるととも
に、専門家同士の競争促進や人材流動化、教育の多様化を図る。二十七年まで
の三年間は「結実期」とし、育成した人材の質の向上や能力開花も重点目標と
する。こうした戦略は来夏に策定する知財推進計画二〇〇六に反映していく。

 高付加価値の製品やサービスを生み出す源泉となる知財権は、国際競争が激
化する中でますます重要視され、アジアなどで横行する模倣品や海賊版に対抗
する役割も高まっている。政府は「知的財産立国」を目標に掲げて省庁横断的
な取り組みを進めているが、昨年の調査では民間企業の57%が専門的人材が
不足していると回答、人材育成が急務となっていた。

 知財戦略本部では「人材の増加と質の向上を同時に進めるべきだ」として、
官民連携の必要性を強調。専門家の増加で中小企業も含め、国民全体で知財尊
重への認識が高まることを期待している。

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【用語説明】政府の知的財産戦略

 平成14年11月の知的財産基本法制定に続き、15年3月に小泉純一郎首
相をトップとする「知的財産戦略本部」を設置。同年から毎年、「知的財産推
進計画」を策定し、これまでに知財高裁の発足、特許審査の迅速化、海賊版の
水際阻止などの成果を上げてきた。今年6月に決まった「知財推進計画200
5」では、知財専門家の倍増、模倣品撲滅への国際的取り組み、インターネッ
ト商取引での取り締まり強化などを打ち出している。