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『高知新聞』2005年11月29日付 女子大再編で法学系学部を検討 年度内に詳細 高知女子大など県立大学の将来像について検討している県は28日、同大へ の設置が提言されている社会科学系新学部の基本構想を発表。県内初の法学系 学部を打ち出した。方向性が明示されている「男女共学化」には言及していな いが、構想自体が共学化を前提としたものとなっている。設置時期など詳細は、 年度内に発表する県の県立大改革計画の中に盛り込まれる。 県立大への社会科学系学部の設置は、「共学化」の方向性と併せて「県立大 学改革検討委員会」が昨年10月に橋本大二郎知事に提言。県内からは毎年、 県外大学の法律や経済、経営、商学部などに700人ほどが進学しているため、 この受け皿となる学部や教育内容の検討を、財団法人国際高等研究所(京都) に委託していた。 基本構想は▽(社会経済学科がある)高知大との重複を避ける▽司法制度改 革などで法学系学部の需要、役割は増大加速している――などから法学系とし た点を説明。 新学部は名称を法務総合学部とし、1学年は200人程度とする。学部内容 では、基礎科目の習得後に専門を選択するコース制を導入。法律専門家や公務 員希望者らを育てる「法専門コース」、ビジネスと法を学際的に学ぶ「法経営 コース」、知的財産権や特許権など情報と法の関係を学ぶ「法情報コース」を 掲げた。 また、社会人教育の面から科目等履修制を導入し、昼夜、土日開講制なども 検討する。 県私学・大学支援課によると、社会科学系大学への進学者割合は全国平均の 約38%に対し、本県は約25%(いずれも昨年度)と低い。同課は「高知工 科大が開学した9年度に工学部への進学者が増えた。同じように県内にこれま でなかった法律系学部の新設で進学者は確保できる」などと説明している。 「共学化」は後回し? 県立大の意味再考を 昨年10月、県立大学改革検討委が社会科学系学部の設置を提言してほぼ1 年。今回の県の構想骨子には「共学化」の記述はないものの、実質上は共学後 の県立大再編案の一部といえる。県内初の法学系学部の構想に「進路選択肢が 広がる」と評価する声がある一方、学部構想自体を問う意見もくすぶっている。 「700人の学生が県外に抜けているというが、その詳細な理由の分析や学 部卒業生の就職面などをもっと説明してほしかった」 今月下旬、構想を策定した国際高等研究所の説明について、高知女子大の青 山英康学長はこう振り返る。構想に疑問符を付けた格好だ。 半面、県内の公立私立高の進路担当者には、共学化を前提に「法学部を目指 して県外に抜けていた学生の受け皿、選択肢になる」と評価する声がある。た だ、「結局は就職。地盤がしっかりしないと、都市部の私立や四国内の国立大 へ志願者は流れる」などと分析。様子見の声も目立った。 女子大側は独自の薬学科構想をこの夏、県に提示した。薬学科構想にしても、 今回の新学部構想にしても中身の話し合いはこれからという状況。県と女子大 の話し合いが進んでないのはもちろん、その歯車がかみ合っているとは思えな い。 そもそも、重大な関心事である「共学化」を後回しにしたまま、既成事実化 しようとすることが、県立大改革に県民的議論を期待する姿勢とは言い難い。 年度内に県立大全体の改革計画が発表される。「共学化」を明快に打ち出す のか。新学部構想とペアの関係にある高知短大廃止などをどうするのか。時間 は限られている。いま一度、「県民のための県立大とは何か」の基本に立ち返っ た議論が必要だろう。 (社会部・矢野憲州) |