|
不利益変更に関する最高裁判例の読み方 he-forum各位 11/29/05 山形大学職員組合書記長 品川敦紀 この間、全国の多くの大学執行部は、人事院勧告を受けて就業規則の一方的不利益変更に よって、給与の切り下げを行おうとしています(寒冷地手当では実際に行ってきました) 。 この就業規則の一方的不利益変更は、数々の最高裁判例でも「原則として認められない」 ことが表明されています。にもかかわらず、大学執行部の多くは、いくつかの判例を持ち 出して、そうした一方的不利益変更を合理化しようとしているように思えますので、再度 、誤解なきよう最高裁判例を確かめておきたいと思います。 例えば、大阪大学職員組合の人勧に従った賃金切り下げをするなとの要求に対する大学側 の回答では次のような主張をしています。 「まず、最高裁判例で示されているのは、賃金や退職手当の改定について、これが不利益 変更に当たる場合においても、「そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許 容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容の就業規則の作成又は変 更については、これを同意しない者に対しても、その効力を生ずる。」というものであり 、この点について留意いただきたい。そこで、最高裁における合理性の判断要素から検討 したとしても、大学としては、今年度の人事院勧告をもとに、就業規則を変更しても、そ の変更は合理性が 十分にあるものと判断している。」 大阪大学執行部の回答は、秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決)の引用と 思われますが、この主張には、大きな誤りがあります。 すなわち、そもそもこの裁判は、定年制の導入について多数組合の合意の下に不利益変更 された就業規則に対し、これに同意しない少数組合の労働者が起こした裁判です。 そして、最高裁は、いくつかの判断要素にもとづいて判断した結果、「新たな就業規則の 作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課する ことは、原則として、許されないと解すべきである」としつつも、改定した就業規則に「 法的規範性」を認めて、「労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建 前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労 働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されな い」と判断したにすぎないものなのです。 逆に言うと、過半数代表者や過半数組合、あるいは、最大組合が同意してない一方的不利 益変更まで是認したものではないということです。実際、最高裁も含めた多くの判例に於 いて、就業規則の不利益変更についての「合理性」の判断要素として、多数組合との合意 が考慮されています(第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日第二小法廷判決)他)。 みちのく銀行事件(最高裁平成12年9月7日第一小法廷判決)では、73%の組織率を持つ多 数組合のと合意の下で進められた不利益変更ですら、不利益変更の程度によっては、「被 る前示の不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際 に労組の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではない」と判断しています。 各単組の皆様には、「高度の必要性」も、「合理性」もない一方的不利益変更は、最高裁 も認めていない違法行為(労働基準法第2条、第15条、第24条違反)だということに 確信をもって大学側と対峙していただければと存じます。 |