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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』2005年11月25日付

虚偽の大学設置申請に罰則 文科省、再発防止狙う


 少子化などの影響で大学間競争が激しくなる中、文部科学省は、大学などの
設置に関して虚偽の申請があった場合のペナルティーを新たに制度化して厳正
に対処する方針を固めた。負債を隠したり、教員の研究業績を水増ししたりす
るなど、学生確保を急ぐあまり設置申請書類に虚偽の内容を含むずさんな計画
が目立ってきたためで、再発防止が狙いだ。同省は来年度の申請からの適用を
にらみ、省令改正などの検討に着手した。具体的には、虚偽が発覚した場合に
は一定期間認可をしない方針だ。

 これまで文科省は、大学との信頼関係に基づいて虚偽申請に対する明確なルー
ルを設けておらず、問題が起きても行政指導などで是正を促すしかなかったが、
従来の姿勢を転換する。大学側にとっては、一部でも不正な申請があれば、学
部新設など学校全体の運営に支障をきたし、大きな影響を受けるため、厳密さ
が求められるようになる。

 ペナルティーの対象となるのは、設置認可申請書などの関係書類に虚偽があっ
た場合のほか、申請者が(1)法令違反により是正措置を受けているが違法状
態の是正がされていない(2)私学助成金等の補助金の返還命令が未履行――
などの場合についても不認可の対象として検討される見通しだ。

 ペナルティーの期間については、例えば、虚偽申請があれば5年間は交付し
ないとする科学研究費補助金の規定などを参考に、その悪質性に応じて数年間
は設置認可しない方向で検討している。

 大学や学部を新設するには、文科省の大学設置・学校法人審議会に申請書類
を提出して審査に合格し、文科相の認可をうける必要がある。

 ところが最近、東北文化学園大学が多額の負債を隠して架空の寄付金を計上
した書類を提出して設置認可を受けるなどして元理事長が逮捕(04年9月)
▽信州大学が法科大学院を新設する際、就任予定の教員について研究業績を水
増しした書類を提出したことが発覚(05年4月)――などの不祥事が相次い
だ。

 また、研究業績の水増しをめぐっては、山口県立大学の学長が「完成予定」
として申請した論文ができあがらないまま放置されたことが発覚し、学長が辞
任した(05年10月)ケースもあった。このため、文科省は今後の設置審査
では完成して公表された論文だけを審査対象とし、「完成予定」論文は受け付
けないことも予定している。

    ◇

 07年度には計算上、大学・短大の入学者数が志願者数と同数になる「全入
時代」を迎える。一方で、社会の高度化に対応して、特に大学院の開設が増え、
04年度には大学院を置く大学の数は20年前のほぼ倍にあたる546に達し
た。大学や学部などの設置認可・届け出件数も増加傾向にあり、00年度の2
50件が5年後の05年度に26%増の314件あった。