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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』茨城版 2005年11月23日付

大学に危機感、高校との交流拡大


 県教委が03年度から県内の大学と協定を結んで進めている「高大連携事業」
をはじめとして、県内の高校と大学の交流が定着しつつある。生徒に進学意識
を持たせ、学習の動機付けをしたい高校側と、少子化の影響で減少傾向にある
学生を確保したい大学側との利害一致が背景にある。(村松真次)

 県教委は現在、県内の4年制8大学と協定を結び、県立高校生を対象に「高
大連携事業」を進めている。事業の柱は(1)大学の通常授業に高校生が参加
する「公開授業」(2)高校生向けに大学が授業を用意する「公開講座」(3)
大学が高校に出向き、授業をする「プレ・カレッジ講座」の三つ。受講科目は
高校の判断で単位として認定される仕組みだ。

 今年度は、茨城大で八つの公開授業、筑波大など3大学での六つの公開講座、
県内の10高校で10のプレ・カレッジ講座を実施中。参加する生徒も03年
度の528人から今年度は733人と年々増加している。

 県教委高校教育課は、この事業について「学力を基準にした大学選択から、
学びたい学問や適性を基準にした選択への転換」と狙いを説明する。「進路の
参考になったという意見があり、成果は着実にあがっている」とする。ただ、
受講時間や料金、高校生からのニーズが高い心理学などの講座設定をどうする
のかなどの課題も残る。来年度も事業を継続する方針だが、県教委は「今後も
改善の余地がある」という。

 1月下旬に県教委と協定を結んだ筑波大は、受講料を無料にして本格的な取
り組みを始めた。少子化の影響で、同大学の志願者数(前期日程)は96年度
の5362人から05年度は4232人と減少傾向にある。

 「優秀な学生を確保するには一定の志願者がいなくてはならない」(同大入
試課)と危機感を感じている。同大学務課は「大学の雰囲気と学問に触れても
らうことで、意識の高い生徒を確保したい」としている。

 一方、独自に大学の講師を招いて交流を図る高校もある。県立勝田高は11
月中旬、県内外の9大学から10人の講師を招き、ロボット工学から株式市場
など多岐にわたるテーマで大学模擬授業を開催した。1、2年生約400人が
熱心に耳を傾けた。今回で3回目。生徒らからは「進路の参考になった」「事
実を知って研究してみたくなった」などの感想が寄せられたという。

 同校進路指導部の佐藤秀俊教諭は「普段、触れられない学問に興味を持てる
場。生徒には非常に有意義だ」と成果を強調。来年度も模擬授業を開催する方
針だという。