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新首都圏ネットワーク

『科学新聞』2005年11月11日付

2人の大臣が会見
今後の抱負を語る

 第3次小泉改造内閣が発足し、文部科学大臣には小坂憲次氏が、科学技術政
策担当大臣には松田岩夫氏が就任した。日本の科学技術政策を担う2人が今後
どのように科学技術に取り組んでいくのか、初閣議後の記者会見からまとめた。

小坂憲次 文部科学大臣

21世紀を担える人づくりを

 文部科学大臣は、人づくり、日本を支える技術開発、日本の将来のエネルギー
開発といった幅広い任務を持った重要な仕事と認識。義務教育の構造改革や教
育基本法改正が議論になっていることを踏まえ、幼児教育から初等中等教育、
高等教育にかけて、それぞれの分野で日本が21世紀を担えるような人づくりが
着実に推進できるよう、体制や法律の整備、省としての取り組みに、政治家と
しての感性と一般からの意見を聞きながら、取り組んでいきたい。

 第3期科学技術基本計画では、天然資源に乏しい我が国が今後明るい未来を
切り開いていけるような人材の育成・確保、活躍の場を提供すること、また基
礎研究の充実を図り、それぞれの産業分野のイノベーションを推進する。国家
の基幹技術の推進を戦略的かつ重点的に進める。さらに科学技術投資の一層の
拡充を図り、次世代に向けての基礎技術の積み上げにより、日本独自技術を開
発し産業面に活かす。そういった実践的かつ戦略的、重点的な基本計画にして
いきたい。

 原子力分野では、エネルギーとしての分野と放射線利用の分野がある。エネ
ルギーとしては、我が国の発電量の30%を占めている原子力発電なくして、21
世紀の我が国の発展はない。そういう意味で、原子力発電の安全性、安定性を
高める研究を推進すると同時に、発電の残渣、廃棄物の処理について適切な方
法を見つけていくこと、今以上に安全で安定した方法を見つけることが必要。
放射線利用分野では、先進的な医療、難病の克服、バイオ分野での活用、そし
てITERをはじめとした核融合等の新たな研究開発に意欲的に取り組むこと
が必要。国際協調や枠組みを重視しつつ、我が国独自の技術開発に取り組める
よう予算面の充実を図る努力を重ねたい。

 宇宙開発では、日本はまだ有人について特別な技術は持っていない。しかし、
21世紀のどこかで日本がそういったものに挑戦していくことが必要かもしれな
い。国際社会における動向を見極めつつ、国際宇宙ステーションに対する協力
体制も考えていく必要がある。 当面は、H2Aロケットの技術的な安定性の
向上に向け、またそれらを利用した宇宙の適切な利用環境の確保、適時必要な
ときに必要な衛星を打ち上げられるような技術開発などに取り組みことが必要。
他人に依存することなく、日本独自技術で協力できるように目指すことが、国
際社会における先進国としての日本の取り組みだと思っている。


松田岩夫 科学技術政策担当大臣

官民一体科技技術で国力発揮へ

 松田大臣は就任会見の開口一番、知恵づくりの根底にある科学は、これから
の日本の要である。知恵に富む優れた人が、最大限力を発揮できる環境を構築
したいと述べた。ロンドン大学の留学、ニューヨークでの勤務など国際経験も
豊富で、人文科学が国際的に遅れているとし、科学技術政策の幅を広げたいと
した。また理学工学も伸びる余地があり、政府が支援できる領域は多いと独自
の見解を示している。

 来年4月から第3期科学技術基本計画が始まることに関しては、政府の科学
技術政策だがとしながらも、官民を挙げて科学技術で国力を発揮できるものに
仕上げたいとし、IT大臣の役割と併せ、科学技術の官需もまだまだ掘り起す。
民間に対してもフル活用する環境づくりを促す。日本の力強い政策なのだと国
内外に示すことができる金額を明記したいと強調している。

 また小泉純一郎首相から起用を伝えられた際には、科学技術の先進国として
世界の人類のための科学技術政策を考える必要がある。先進国の科学大臣会議
を日本の先導で開催するアイデアもあるとした。

 食の安全、理科離れについては、いずれも豊かな国の特徴的な問題との認識
を示し、さらに豊かな国を目指すため不断の努力が何より必要。科学を国民に
分かりやすく伝え、国民の理解が得られなければ、次に進むことはできないと
した。 また就任の決意として、誰もが思い切り生きていくことを徹底できる
社会が理想で、個々人が最大限の努力する日本人の国の形を科学技術から作る
と、所信を表明している。