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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年11月15日付

第3期科学技術基本計画答申案
「成果、社会に還元」強調

 政府の「第3期科学技術基本計画」の答申案がまとまった。06年度から5
年間の科学技術政策の基本方針となるものだ。総合科学技術会議(議長、小泉
首相)は来月11日までに国民の意見を募り、年内に最終決定する方針だ。

 まとめたのは、同会議の専門調査会。答申案の特徴のひとつは「成果を社会、
国民に還元する努力の強化」だ。鳥インフルエンザなどの感染症や大規模災害
などに対し、「国民を悩ます病の克服」「社会と暮らしの安全確保」の実現を
目標に掲げた。

 若手、女性、外国人ら多様な人材の育成も強化する。若手を対象にした公募
型の公的研究費制度を拡充し、女性研究者の採用目標を25%とし、達成状況
を公開するよう研究機関に促す。

 一方、国が主体的に取り組む大規模計画を「国家基幹技術」と位置づけ、集
中投資する。「公共事業的な発想でおかしい」との声もあったが、「世界をリー
ドする人材を育て、国家の安全保障、経済、社会上の効果も大きい」と盛り込
んだ。次世代スパコンと宇宙輸送システム技術を例示し、来春までにに具体的
に選定する。

 また、予算の投入目標額を盛り込むかどうかは、結論を先送りした。第1期
では17兆円、第2期では24兆円と明記したが、今期は財務当局が厳しい財
政事情から数値目標に反対。結論は関係閣僚が12月下旬までに政治判断する
見通しだ。

答申案は、http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/kihon/tousinan.pdf

◆◆

松田岩夫・科学技術担当相にきく

戦略的投資、進めたい

 資源のない日本は、知恵で生きていくしかない。最たるものが科学技術だ。
その成否は、創造性豊かな人材をどう育てるか、成果を生み出すシステムをい
かに作るか、にかかっている。

 ちょうど、これから「第三期科学技術基本計画」の策定作業が山場を迎える。
この中に、こうした仕組み作りを盛り込む。重要なのは、国が科学技術にいく
ら投じるか、具体的な数値目標を入れることだ。

 一方で、科学技術への投資をさらに透明性をもたせることも欠かせない。各
省庁の施策で、だぶりはないか、無駄はないか、総合科学技術会議でも十分に
精査して、戦略的な投資を進める必要がある。

 300億円を超える大型プロジェクトについては、従来は予算付けの事前評
価だけだったが、今後は、中間、事後評価も実施して、国民に還元できるよう
な成果が出ているのか、チェックする必要がある。独立行政法人や国立大学法
人でも、業績を指標できちんと評価しないといけない。

 まだ、「理科離れ」「科学離れ」を防ぐためにも、知恵を絞りたい。科学技
術が日本の運命を決めるんだ、ということを、子供、若者だけでなく、国民全
体に意識してもらえるような、国民的運動が必要だ。 (談)
(石田勲)