トップへ戻る  以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク

共同通信配信記事 2005年11月14日付

『国立大は安い』今は昔
入学料、私大と逆転


 国立大で入学料や授業料の値上げが続いた結果、入学料では国立大の方が私
立大より高い“逆転現象”が起きている。充実した施設とともに、国立大の売
りだった「安さ」。各大学は「これ以上学生の負担を増やすことがないように」
と、国の予算編成を前にさらなる値上げを警戒している。

 長崎市で七日、開かれた国立大学協会(国大協)の総会。会長の相沢益男東
京工業大学長は「入学料の値上げは断固反対だ」と発言した。今春に授業料の
基準となる「標準額」が一万五千円引き上げられたため、「次は入学料」とい
う警戒感を国大協として表した。

 授業料や入学料の値上げは「私立大との格差是正」が理由にされてきた。授
業料は一九七五年度には、国立大三万六千円、私立大約十八万二千七百円(平
均)と格差は五倍以上だったが、二〇〇四年度は国立五十二万八百円、私立八
十一万七千九百円と一・六倍に縮小。

 入学料は七五年度に国立大五万円、私立大九万五千六百円だったが、少子化
をにらんで私立大の一部が学生集めのため引き下げたことなどから〇四年度に
逆転、国立二十八万二千円、私立二十七万九千八百円となった。

 私立大が入学時に集める平均二十万円の施設費を合わせても格差は七五年度
の四・三倍から一・六倍に縮まった。

 「施設費など入学時に支払う額は私立の方がまだ高い」。財務省によるこれ
までの値上げ主張に対し、文部科学省は「国立大の場合、施設整備は国の責任
で行うもの。入学料と施設費を一緒にはできない」と反論する。

 授業料や入学料の引き上げは、地方国立大の経営に影を落としている。学生
を学費の安さでつなぎ留めることができない上、共同研究で資金を得たくても
組む企業が少ないからだ。頼りは国からの運営費交付金だが、経営効率化を促
すため年1%の削減が続いている。

 この春に唯一、標準額の値上げに同調せず授業料を据え置いた佐賀大は交付
金減額と合わせて約二億円の減収になった。財務担当の野田清理事は「県内に
大企業が少ないので外部資金もなかなか集められない。都会から来る学生のた
めに据え置いたが…」と漏らす。

 日本消費者連盟の水原博子事務局長は「引き上げは若い人の学ぶ機会を奪う。
税金を払っている立場からすれば、国立大はもっと税金で賄われるべきだ」と
話している。