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新首都圏ネットワーク

『読売新聞』2005年11月4日付

私大救済策 急ピッチ 再建プロ集団 破たん保険も
国や私学団体 「全入時代」控え


 少子化による私立大学の経営悪化に対応するため、私学団体などが再生支援
策や破たん時の救済制度づくりを本格化させている。10月には大学を再建す
るプロ集団が組織され、「破たん保険」の創設なども検討中だ。文部科学省も
破たん大学の学生を保護するプログラムを策定しており、「大学全入時代」の
到来を2年後に控え、官・民でセーフティーネットの整備が進んできた。

 大学経営セミナーなどを開催する「日本私学経営活性化協会」(東京都千代
田区)は10月、弁護士や公認会計士、不動産鑑定士ら約20人で組織する
「私学経営支援委員会」を発足させた。経営悪化した私大からの要請で現地調
査を行い、経営診断や再生計画の策定を手がける。都市銀行とも提携し、再生
資金の融資も行う方針で、同協会の中尾三平・経営支援センター副所長は「破
たん状態に陥る前の早い段階から相談してほしい」と話している。

 「日本私立学校振興・共済事業団」(同)は今月中に清成忠男・前法政大総
長を座長とする「学校法人活性化・再生研究会」を設置し、「破たん保険」の
具体的な内容を検討する。各大学が拠出した資金を破たん大学に投じ、在校生
が卒業するまで学校運営を確保するのが狙いだ。大学・短大の統合を進める
「大学版M&A」なども検討課題になる見通しで、研究会は来年6月ごろに中
間報告、2007年6月ごろに最終報告を公表する。

 一方、文科省は今年5月、破たん大学の学生保護プログラムを盛り込んだ
「経営困難な学校法人への対応方針」をまとめた。破たん大学の学生受け入れ
を近隣大学に要請し、受け入れ大学に入学金減免や修得単位の認定などへの配
慮を求める。

 同事業団によると、今春入試で定員割れに陥ったのは私大の約3割、私立短
大の約4割。今年6月には山口県萩市の萩国際大を運営する学校法人萩学園が
定員割れで東京地裁に民事再生法の適用を申請、改めて私大の経営危機がクロー
ズアップされた。

大学全入時代

 大学・短大の志願者数が入学者数と一致する状態。文部科学省は当初、到来
時期を「2009年度」と予測していたが、昨夏、2年早い「2007年度」
に修正した。競争力の弱い大学の経営は一層困難になると予想されている。