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新首都圏ネットワーク

『科学新聞』2005年10月28日付

科技関係施策に厳しい評価

S、A前年比4%減
18年度概算要求に反映


 平成18年度科学技術関係予算概算要求に対する評価、いわゆる総合科学技術
会議のSABC評価が明らかになった。17年度概算要求と比べ、プラスの評価
であるSとAは、件数ベースで4%、金額ベースで10%減るという厳しい結果
になった。来年度予算編成に活用される。また、今回は独立行政法人、国立大
学法人等の活動についても決算ベースで把握、所見をまとめた。

 SABCの対象となったのは、概算要求3兆8038億円のうち、各府省の1億
円以上の新規施策と10億円以上の継続施策193件、約9000億円分。また、独
立行政法人や国立大学法人等の大規模施策180件、約1兆2000億円分につい
ても、SABCに準じる見解付けを行った。

 最も高いS評価を受けたのは24件、A評価72件、B評価78件、最も低いC評
価になったのは19件。金額ベースでは、S評価28%、A評価34%、B評価35%、
C評価3%。S評価は、金額ベースで53%(15年度)→45%(16)→36%(17)
→28%(18)と年々減ってきている。これについては政府与党からも異論が出
ている。また阿部博之総合科学技術会議議員は「重点化を進めると結果的には
こうなる。小柴先生の例はほんの一部。関係各所から厳しい批判が出ている」
という。

 C評価は昨年度と比べ9%も減ったが、これは今回の概算要求基準(シーリ
ング)が昨年度に比べ、非常に厳しくなったことで、各省の概算要求自体が縮
減(5.2%減)したことが大きな要因。

 また、今回は私学助成や科研費などについて、精査したのが特徴。私学は経
常経費(B評価)と特別補助(S)を、科研費は若手研究などの独創的な研究
開発(S)と学会支援などの研究成果公開促進費(A)を分けて評価している。

 今回は独法、国大法人等の科学技術関係活動について初めて調査した。独法
では、産業技術総合研究所が論文数・特許数ともに他を圧倒、2位の理化学研
究所と比べ、論文数では約1.4倍、特許数では約3倍となった。研究者数は、産
総研が2208人で理研は2672人。産総研は、旧工業技術院時代に比べ、アクティ
ビティが大幅に上がった。

 競争的研究資金の獲得金額で見ると、理研47億1080万円、産総研29億6000万
円、国立環境研究所21億9300万円、物質・材料研究機構19億7400万円、農業・
生物系特定産業研究機構12億5900万円、宇宙航空研究開発機構10億1500万円、
農業生物資源研究所8億7100万円、放射線総合医学研究所6億5200万円、森林
総合研究所5億9700万円、食品総合研究所5億1800万円。研究者1人あたりで
見ると、環境研、食総研、物材機構がベスト3となった。

 人材面では、任期付き研究者数、若手研究者数、女性研究者数、外国人研究
者任用数、すべてで理研がトップ。産総研は任期付き・若手・外国人で2位、
女性では農業・生物系機構が2位となったが、それぞれ理研とは大きく差が開
いた。

 国大法人の場合、研究経費と呼ばれるものは、教育研究経費や教員人件費、
科研費など研究者個人やグループに配分されるものを除いて計算される。総額
で2333億円、経常経費の9.9%となる。いわゆる基盤的経費にあたる。

 上位から、東大253億円、自然科学研究機構212億円、東北大158億円、阪大
157億円、高エネ機構155億円、京大133億円、情報・システム機構129億円、北
大79億円、名大70億円、九大69億円。教員1人あたりでは、奈良先端大、阪大、
東大、東北大、情報・システム機構、東工大、豊橋技科大、京大、名大、北陸
先端大の順になる。

 ただし、総額7667億円にのぼる人件費が含まれていないため、教育や研究に
どれだけの経費がかかっているのか、正確には分からない。教職員がどれだけ
の時間配分で教育と研究あるいは管理、雑用などをやっているのかを明確にす
る、エフォート管理ができていないためだ。阿部議員は「大学として教育にこ
れだけ取り組んでいるというメッセージが出てきていないため」という。また、
財務省の中川主計官は「エフォート管理は組織マネージメントをする上での条
件」と厳しい。


S評価を受けた施策(※印は競争的資金)

内閣府
 沖縄科学技術研究基盤整備機構施設整備費補助金60億1600万円

文部科学省
 私立大学補助金(うち重点配分)543億4800万円
 タンパク質解析基盤技術開発11億5000万円<ライフ>
 統合データベースプロジェクト3億円<ライフ>
※革新的シミュレーションカトウェア研究開発プロジェクトl1億6000万円
 統合地球観測・監視システム(データ統合・解析システム)6億円<環境>
 地震・津波観測・監視システム25億8300万円<社会基盤>
※科学研究費補助金(うち若手育成等)1375億1000万円
※科学技術振興調整費(新規プログラム分)90億円
 理科教育等施設整備費補助14億円
 知的クラスター創成事業(拡充部分とマッチングファンド分)26億円
 大学等施設整備(老朽化対策〕337億1300万円

厚生労働省
※第3次対がん総合戦略研究事業60億6000万円<ライフ>
※エイズ・肝炎・新興再興感染症研究56億4700万円<ライフ>
※萌芽的先端医療技術推進研究(ナノメディシン分野)21億5300万円<ナノ材料>

農林水産省
 遺伝子組換え等先端技術安全性確保対策5億9900万円〈ライフ>

経済産業省
 サービスロボット市場創出支援事業4億2000万円
 燃料電池先端科学研究委託費12億万円<エネルギー>
 省資源低環境負荷型太陽光発電システムの開発2億5000万円<エネルギー>

国土交通省
 都市空間の熱環境評価・対策技術の開発1億5800万円<環境>

環境省
 気候変動影響モニタリング・評価ネットワーク構築等経費4億円<環境>
※地球環境研究総合推進費43億2600万円<環境>

警察庁
 3次元顔画像を用いた個人識別の高度化に関する研究1800万円<社会基盤>