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新首都圏ネットワーク

『毎日新聞』2005年11月2日付

博士研究員:就職支援に5億円 文科、経産省が来年度から


 研究現場を支える若手研究者「ポストドクター(ポスドク)」の就職支援に、
文部科学省と経済産業省が来年度から乗り出す。大学や研究所の常勤職ポスト
が少なく、30〜40代になっても定職に就けない博士号取得者が目立ってい
るため。両省は来年度、ポスドクと民間企業など新たな進路とを橋渡しする新
規事業に計約5億6000万円を支出し、「博士の就職氷河期」の解消を目指
す。

 ポスドクは博士号を取得した後に任期付きで働く研究員。政府は、研究開発
能力の強化のため、ポスドクに一定の年収を保証する「ポスドク等1万人支援
計画」を科学技術基本計画に盛り込み、量産化を進めた。昨年度のポスドクは
約1万2500人と推計される。

 しかし、定職を探す30〜40歳代のポスドクの就職難が深刻になっている。
常勤研究職の数は増えず、企業への就職も限られているためだ。

 そこで両省は、博士たちと研究機関以外の就職先との出合いの場を作ること
にした。

 文科省は、大学や企業を対象にモデル事業を募集し、支援する。人材派遣会
社などが、ポスドクに研究機関以外の就職情報を提供し、企業に出す研究企画
書の作成方法を指導するといった事業が考えられる。経産省は、ポスドク向け
にベンチャー企業などの求人情報をデータベース化したり就職セミナーを開く。

 澤昭裕・東京大先端科学技術研究センター教授(経営戦略)は「企業も即戦
力の優秀な研究者を求めているが、求人情報が研究現場に届きにくい。世渡り
下手の博士に、研究機関以外の活躍の場を気付かせられれば、新たな人材マー
ケットが生まれる」と話す。