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新首都圏ネットワーク

『琉球新報』2005年11月1日付

変革多様な提言 戦後60年と大学教育シンポ


 女性研究者の会はことし創立10周年を迎えるに当たり、フォーラム「戦後
60年、大学教育をふりかえって」を10月29日、那覇市天久の琉球新報社
で開催した。国立大学の独立法人化、少子化などの影響でさまざまな変化を求
められている大学。これからの大学はどうあるべきか。シンポジウムでは大学
教育の現場に携わってきた識者4人がそれぞれの立場から、県内の大学につい
て話し合い、現在の問題点を確認。大学に対して「未来への提言」を述べた。

 新垣都代子氏 今回のフォーラムは「戦後60年、大学教育をふりかえって」
となっている。それぞれの考えを聞きたい。

 佐久川政一氏 現在、大学は再構築の時代を迎えている。民事再生法で手続
き中の私立大学もある。

 国立大学の独立法人化など、これまで教育行政の中に枠付けされていたもの
が、弾力的に民間経営も取り入れるなどある面では自由になった。しかし教育
の現場にも競争原理が取り入れられたということ。

 これまでの「均一な教育を行き渡らせる」という姿勢から「百人に一人、国
を引っ張る人材が育てばいい、残り99人は平凡で従順な国民になればいい」
という考え方に変わった。これは大変な問題だ。大学教育は良くも悪くも変化
を押しつけられている。こうした現状に、疑問を感じる。

 宮城晴美氏 県内において、女性学や女性史などの女性研究者が育っていな
い。沖縄の女性はこれまで研究対象として男性からの視点で語られてきた。理
由として、現在の大学教育の中で女性学の指導者が少ないこと、プログラムが
ないことなどが挙げられる。

 トートーメーや離婚率、DV(ドメスティック・バイオレンス=配偶者から
の暴力)など女性が日々の生活の中で抱える問題は、女性自身が解決しなけれ
ばならないテーマ。これからの大学は女性学のカリキュラムを設置したり、民
間の現場で活躍する女性問題の専門家を活用するなどして、これらの問題を考
えられるような人材を養成することが求められている。

 新崎盛暉氏 沖縄大学では現在、沖縄という地域特性を生かした大学づくり
をこれからの問題として追求しようとしている。本島南部や離島地域の市町村
と提携できないか模索中。その中で県内の他大学と提携していくこともあるだ
ろう。

 だが、現状としては県内の大学間で単位互換ができるシステムがあるのにも
かかわらず、県内で単位互換する学生は例外的で、相互の連携は効果が上がっ
ていない。

 ただ現在、単位互換は学生の自主選択に任せている。「こういう分野を学び
たい」という学生に対し、県内の他大学の授業をこちら側からガイダンスする
ことによって、互換システムを生かすようにできるかもしれない。

 上原あやの氏 取材の現場から感じたことをお話ししたい。少子化などに伴
い、大学もお互いの個性を出さなくてはいけない時代。県内の大学は県内、国
内で個性を競うのではなく、海外に目を向けることを提案したい。

 これまでも留学生による交流や研究機関同士の結びつきはあっただろうが、
沖縄と共通した問題を抱える国、地域の大学と共通課題を一緒に研究すること
によって、さらに発展させていくことができるのではないか。例えば沖縄とグ
アム、ハワイなどは気候や観光に依存した経済など共通点が多い。県内の大学
は「オールオキナワ」として集まって、海外に目を向けていくといいのかな、
と感じている。

【パネリスト】
 新崎盛暉氏(沖縄大前学長)
 佐久川政一氏(沖縄大名誉教授)
 宮城晴美氏(那覇市歴史資料室主査)
 上原あやの氏(琉球新報社社会部記者)
【コーディネーター】
 新垣(にいがき)都代子氏(琉球大名誉教授)