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新首都圏ネットワーク

FujiSankei Bussiness i. 2005年10月30日付

東大も学生募集PR 独立法人化で国立に変化


 東京大学で開学以来初となる受験生向けの大学説明会が二十九日、東京都千
代田区の駿台予備学校で開かれた。東大主催の説明会という話題性も手伝って、
会場内は受験生ら約千人が参加した。昨年四月の独立行政法人化に伴い、競争
原理の導入などの改革を迫られている国立大学だが、東大にも変化が現れてき
た。

 「主要大学説明会」と銘打ったこのイベントは、京都大学や名古屋大学など
国立大学に加え、私立大学の早稲田と慶応の両校にも参加を呼びかけて実現し
た。九月下旬から全国六都市を巡回する合同説明会の形で開催し、今回の東京
会場が最終日。現役、浪人の受験生と、高校一、二年、さらに生徒の父母や高
校の進路指導教諭も対象とした。

 会場には東大や京大など六校が個別相談コーナーを設け、入試担当者が受験
生ら一人ひとりにアドバイスした。

 都内に住む一浪中の男子予備校生は、「自分が学びたい分野について詳しく
説明され、受験勉強のやる気もわいてきました」と話した。川崎市麻生区から
来たという母親は「高三の息子が東大を目指しており、初めて開く説明会なの
で参加しました」。

 東大入試課の渡辺省三課長は「東大で本当に何を学びたいのか、その動機付
けになればいいと考えています。これまでは大学案内用のパンフレットさえ作っ
ておらず、受験生に不親切との反省に立ちました」と明かす。パンフレット制
作に約一千万円をかけて八月に五万部を印刷。「二カ月で品切れとなり、いま
一万五千部を増刷中」という。

 少子化により大学経営も危機を迎えているとされるが、「東大ほどの存在だ
と受験生集めで苦労することはない」(予備校関係者)。それでも渡辺課長は
「別会場の説明会では、早慶両校の相談コーナーの方に受験生が集まるのを目
の当たりにしました」と、危機感を募らせている。

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 国立大学の独立行政法人化 昨年4月、国の行政組織のスリム化の一環とし
て、国立大学が独立行政法人化された。これにより、学長を中心とする執行部
の権限が拡大し、文部科学省などによる予算上の厳しい統制からも外れた半面、
今後の予算配分などをめぐる財政基盤の確保などが課題に。教職員も非公務員
となった。東大の場合、学生が入学後に自分の学部を決める「進学振り分け制
度」の見直しなど、法人化を機に改革を進めている。