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新首都圏ネットワーク

『中日新聞』2005年10月29日付

医学生研修先、大学病院離れ進む
ことし48%、初の半数割れ


 来年四月に医師になる医学生の研修先を希望に応じて公平に決める「マッチ
ング」で、二十八日までに八千百人の研修先病院が決まった。大学病院の割合
は48・3%と昨年を下回り、初めて半数を割り込んだ。募集定員が埋まらな
い地方の大学病院が目立ち“白い巨塔”離れが進んでいる。

 厚生労働省医政局は、大学病院離れの原因を「待遇もあるが、診療科間に壁
があって充実した研修ができないケースもある」と分析。「症例に接する機会
が多い民間病院を選ぶ傾向は今後も続くだろう」として、“不人気病院”には
研修内容の改善を求める構えだ。

 マッチングは、基本的な診療能力の習得を重視して新人医師の臨床研修が義
務化されたのに合わせて二〇〇三年に始まり、今回が三回目。医学生は研修し
たい病院を、病院は採用したい人材を登録し、コンピューターで合致させる。

 今回、希望病院を登録したのは八千四百七十二人で、昨年とほぼ同じ約95
%の医学生の研修先が決まった。

 研修先は、昨年は大学病院が52・7%と過半数を占めたが、今年は48・
3%に減少。大学病院以外で臨床医を受け入れる「臨床研修病院」が51・7
%と半数を上回った。研修医の約70%が大学病院に集中していた旧制度下の
偏重傾向は改善されつつある。

 募集定員の充足率は、臨床研修病院の77%に対し、大学病院は67%にと
どまった。大学病院で100%だったのはブランド力のある東大、京都大、東
京医科歯科大、慶応大、名古屋市立大など大学を中心に十八病院。一方で旭川
医大、弘前大、秋田大、三重大、奈良県立医大、徳島大、香川大は30%を割
り込んだ。

 <医師臨床研修制度> 医師免許取得後、2年間指導を受けながら診療経験
を積む。従来は努力義務で研修医が大学病院に集中、十分な研修プログラムも
ないまま安価な労働力として使われているとの批判があった。相次ぐ事故で医
療不信が深刻化し、厚生労働省は2004年4月から臨床研修を義務化。すべ
ての研修医が内科、外科、救急・麻酔科、小児科、精神科、産婦人科、地域医
療の7分野を経験し、基本的な診療能力を身に付ける方式が導入された。