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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』三重版 2005年10月26日付

起業視野に人材育成 三重大

医学部修士課程に新プログラム

 「地域圏大学」としての存在感をアピールしようと、三重大は地元企業や行
政との連携構想を次々と打ち出している。その一つとしてこのたび、企業との
共同研究を通した人材育成プログラムを大学院医学系研究科(修士課程)内に
設けた。Uターン進学・就職を希望する県出身者にも売り込もうと、23日に
は東京でも説明会を行ったほどの力の入れようだ。(小林舞子)

企業と連携、経営面指導

 新設されたのは「バイオ・メディカル創業プログラム」。おもに県内に事業
所を置く企業に対し、修士課程の学生を送り込み、主要な担当者として生化学
や薬学などの研究に取り組んでもらおうという内容だ。

 大学は研究面で、企業はビジネス面で学生を指導。一連の研究を通し、学生
に問題を解決する力や企画を仕上げる力を身につけさせる。また、この分野で
起業できる人を養成し、人材や成果を地域へ還元させる狙いもある。

 事業を進めるにあたっては、三重大と企業による「創業ネットワーク」を形
成。同大の産学連携医学研究推進機構が仲立ちして両者の意向を調べ、新たな
共同研究を立ち上げていく。修士課程の定員20人のうち、5〜10人をプロ
グラム参画者として募集。社会人にも積極的に門戸を開きたいという。

 このプログラムは、文部科学省の人材育成プランに採択されており、実施は
5年間だ。だが、同大はこれを機に、大学の教育スタイルとして定着させたい
考えだ。

 民間企業の研究員を務め、ベンチャー企業を創業して社長になったこともあ
る同機構の西村訓弘・特命教授は「学生はより実践的に学べるし、企業も共同
研究のメリットは大きい。地域での人材供給源にもなりうる」と話す。

 一方、大学側が意気込む背景には、全国的に修士課程を持つ医学部が増え、
今後、学生を確保しにくくなることが予想される事情もある。

 医師免許を持つ医学部の卒業生が博士課程に進むのに対し、修士課程には主
に理工学部系の学生が進学してくる。三重大は01年に修士課程を設置。筑波
大などに続き全国で5番目の早さだった。

 ところが、学部での知識に加えて臨床経験も踏める利点がある医学部の修士
課程は、その後急増。現在では、42ある旧国立大医学部のうち、31校が修
士課程を設けるまでになった。同大としては今後、より優秀な学生の確保に向
け、他大学との違いを明確にしたい思惑がある。

 取り組みには、学生や行政も期待を寄せる。18日に三重大であった説明会
で、同大生物資源学部の大学院生(24)は「学部で経験したインターンシッ
プは短期間で、学生はお客さん状態だった。ベンチャーにも興味があるし、こ
ういう場ができるのはうれしい」。

 また、県によると、薬学系の専門家が県内では不足がちだったという。薬学
部を持つ大学がないためだ。担当者は「薬学系の人材が育ち、その分野が活性
化されれば。大学と企業が結びつき、Uターン就職にもつなげてほしい」と話
し、積極的に支援するという。