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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年10月17日付

大学院教育に期待7割、採用など配慮なし 東京の企業


 大学院の教育に期待はするが、修士修了生の採用や人事面の配慮はしな
い――。東京都心に本社がある大企業にそんな傾向が強いことが、中央大大学
院経済学研究科が実施した調査でわかった。

 同研究科は8月、東京の主にJR山手線の内側に本社がある大企業約100
社の人事担当者に、調査票を送った。35社から有効回答があったという。

 それによると、能力の向上のために社員を大学院に派遣した「実績がある」
は14社あった。将来派遣を考えている企業も10社あり、計7割が大学院の
教育が社員の能力向上に役立つと考えていることがわかった。

 また、企業側が大学院教育で期待する専門分野は、「経営戦略」が23社、
「知的財産」18社、「国際法務」16社などと多い。長期的な経営戦略を描
くことができ、将来企業の中核を担えるような人材や、社会情勢の変化で企業
に必要性が強まっている専門知識を持つ人材を求める傾向が強いことがわかっ
た。

 一方、修士修了生を採用した実績がある企業は31社あったものの、「毎年
計画的に採用」は6社にとどまった。「良い人材がいれば採用する程度」が2
6社で、大半を占めた。

 入社後の処遇も、修士の学位を取得した社員を、昇進や賃金の面で「一定の
配慮をする」と答えたのは、わずか5社だった。今後、配慮を検討している企
業も3社だけ。学位が人事面で大きくモノをいう欧米企業との認識の違いが、
今も根強いことが浮き彫りになった。

 調査を実施した経済学研究科の田中拓男委員長は「学生に『経営戦略』の能
力の向上を期待する企業が多いことに驚いた。学生側は、専門分野を深く追究
したり、知識の幅を広げたりすることを目指すケースが多く、企業側とギャッ
プがある。今後は、カリキュラムをつくる際に企業のニーズも参考にしていき
たい」と話している。