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新首都圏ネットワーク

nikkeibp.jp 2005年10月6日付

原子力機構、10月1日の独法化を契機に産学連携推進部を新設


 2005年10月1日に発足した独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA、茨城
県東海村)は、大学との連携や地元企業の地域振興を進める組織として産学連
携推進部を新設した。文部科学省傘下の日本原子力研究所と核燃料サイクル開
発機構の二つの機関が統合して原子力機構が発足したのを機に、産学官連携の
担当窓口を明確にする目的で新設したもの。

 原子力機構(旧日本原子力研究所)は高エネルギー加速器機構と共同で、中
性子や荷電粒子などの量子ビームを照射する大強度陽子加速器施設(通称、
J-PARC)を茨城県東海村に建設中。このほかにも原子力機構の高崎量子応用研
究所がイオンビーム、γ線、電子線のビーム源を持つなど、同機構の各施設は
さまざまな量子ビームによる構造解析ツールを持っている。

 例えば、中性子ビームなどの照射によって燃料電池に用いるプロトン伝導高
分子膜、水素吸蔵合金、酸化物系高温超電導体、タンパク質などの構造や物性
の解析の有力ツールになる。中性子ビームは材料の残留応力計測もできる。ま
た、π中間子が崩壊してできるミュオン(プラス・マイナスの電荷を持つ軽粒
子の一種)ビームの照射は磁性材料や酸化物系高温超伝導体の物性解明などの
有力ツールとなる。

 量子ビームや放射光などの物性解析の有力ツールを用いて、大学・企業との
産学連携を強力に進める計画である。例えば、ミュオンビームを利用した酸化
物系高温超電導体の解析を、青山学院大学や東北大学、東京工業大学などと進
める予定。また、豊田中央研究所とは熱電材料開発を進める計画などが予定さ
れている。こうした産学官連携をスムーズに進める組織として産学連携推進部
を新設したもの。

 原子力機構が産学連携推進部を設けた趣旨については、2005年10月4日に文科
省研究振興局量子放射線研究推進室が事務局を務めた「第4回 量子ビーム研究
開発・利用推進研究会」の捕捉説明の中で説明された。(丸山 正明=産学連
携事務局編集委員)