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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』福岡版 2005年10月4日付

九大伊都キャンパス開校 有川副学長に聞く


「学生と新たな歴史作る」

 九州大学の「伊都キャンパス」(福岡市西区、前原市、志摩町)が、開校し
た。91年に同地区への移転が決まってから14年。ようやく新しい土地での
教育・研究活動がスタートした。キャンパス担当理事として移転作業のまとめ
役を務めた有川節夫・副学長(64)に、これまでの経過や新キャンパスの将
来像を聞いた。

 ――移転作業は順調でしたか。

 「大きなプロジェクトにしては順調だったと思う。敷地内で多くの遺跡が見
つかり、調査や発掘に時間がかかったが、関係機関の協力も得てここまでやっ
てこられた」

 ――移転の完了予定時期は20年で、当初計画より5年遅れになりました。
さらに延びる可能性は。

 「今のところ、延びる気配はない。資金面は国の財政状況によるところが大
きいが、状況が好転したり、六本松、箱崎両キャンパスの跡地売却が順調に進
んだりすれば、早まることもある。なるべく早く全体の移転を終わらせたい。
これからの大学は『文理融合』が大事で、総合大学としての活動がしっかりで
きるようになるからだ」

 ――新キャンパスを中心とする大学作りで重視している点は。

 「梶山(千里)学長が九大の法人化以降強調しているアクションプランに、
大学がやるべき四つのこととして、教育、研究のほか、社会貢献、国際貢献が
挙げられている。社会貢献では、水素エネルギーを使う『水素キャンパス』や、
『ICキャンパス』を整備する中で、産官学の連携を強めたい。企業誘致も進
め、九大を中心とした学術研究都市をつくりたい。地域の人たちとの連携も深
め、それをアジアの国々にまで広げたい」

 ――新キャンパスでの学生生活はどうなるのでしょうか。

 「必要な戸数を上回る学生向けの住居を新キャンパス周辺に確保できたと思
うし、1年遅れになるが、254室ある学生寮もできる。通学面では、JRに
駅を、昭和バスや西鉄バスには新しいルートをつくってもらえた。『校舎がま
だ整備されていない』という声もあるが、できた部分から使っていかないと、
カビが生えたりする。しばらくの間の不自由さは忍んでほしい」

 ――学生から「引っ越しや通学の費用負担が大きい」との声も出ています。
何らかの補助は?

 「一般的な補助は考えていないし、過去もそういう例はない。九大は今年、
授業料を上げたが、その分を『学生のために使う』としており、授業料免除の
対象を増やすといったやり方で対応していきたい」

 ――九大を目指す子どもたちに一言。

 「九大は約100年の歴史がある。『これから、新しい100年の歴史を一
緒につくりましょう』と呼び掛けたい。自分たちの可能性を九大の新しいキャ
ンパスでぜひ試してほしい」(聞き手・大西史晃)