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新首都圏ネットワーク

nikkeibp.jp 2005年10月3日付

新潟大、研究成果の“秘密”守秘義務を取り込んだ学生通則作成


 新潟大学は大学の研究活動成果から産まれる秘密情報などの管理態勢を明確
にし、学生が秘密情報による不用意なトラブルに巻き込まれるのを防止する目
的で、学生通則の一部を改正し適用し始めた。大学の研究成果から産まれる秘
密情報を明確にすることで、学生が守秘する秘密の内容を示し、不本意な秘密
漏洩を未然に防止するための措置とする。


 学生を対象にした研究成果などの秘密守秘を実現するために、新潟大の学生
通則に「本学の学生として知り得た秘密を他に漏らしてはならない」との趣旨
を盛り込み、“研究室”単位で秘密情報を管理するとした。2005年8月9日に
「新潟大学の研究室における秘密情報の管理に関する規定」を設け、秘密管理
態勢を整えた。この規定での研究室とは、「本学の研究活動を行う研究単位の
グループ」と定めている。

 産学連携が盛んになるに伴って、大学の研究成果から産まれる秘密情報の取
り扱いが課題になっている。大学が企業などと共同研究すると、秘密情報が発
生するケースが多い。新潟大は2004年度の共同研究件数が約1.5倍になり、秘密
保守の管理態勢の整備が急務になっている。共同研究の相手となる企業も新潟
大の秘密情報の保守態勢を強く求めるようになっている。

 大学の教員などは雇用関係によって、従業員としての営業秘密守秘が適用さ
れる。一方、大学・大学院の主要構成員である学生は学費を支払って教育を受
ける立場で雇用関係がない。このため、職務発明規則などが適用できない。同
大は学生に発明規定などによる秘密情報の守秘を義務づけるために、学生通則
による対応を適用することにしたもの。

 新潟大は2005年7月22日に学生通則に「守秘義務」の項目を追加し実施した。
教員と学生はともに「新潟大学の研究室における秘密情報の管理に関する規定」
を守る義務が生じる。また学生は入学時に「秘密情報に関する誓約書」を提出
する。現在、学生への説明を始めている。

 「新潟大は中規模の大学なので、大学院生が企業との共同研究に参加する可
能性がある。同じ研究室内で、共同研究に参加している大学院生が学部学生と
研究成果を議論する可能性もあるため、秘密情報とは何かを明示し、秘密情報
を守秘してもらうことで、不本意な漏洩を防止するようにした」と説明する。
例えば、学部学生が学外で秘密情報とは意識しないで漏らしてしまうケースも
想定される。これを防止することで、結果として学生を守ることになるとする。

 産学連携を進める大学にとって、教育研究活動成果から産まれる秘密情報を
学生に守秘してもらう管理態勢が現在、議論されている。企業との共同研究の
一部を大学院生を含めた研究チームで担当してもらい際には必ず、秘密情報の
守秘が学生にも求められる。大学院の博士課程の定員が多い有力な研究大学で
は、企業との共同研究に博士課程の学生かポストドクターと呼ばれる博士号を
持つ研究員しか参加させないことで、この問題をクリアしている大学もある。
この場合は、共同研究チームへの参加時に人件費を負担することで雇用契約が
できるケースが多いからだ。

 その一方で、多くの中規模大学・大学院は、修士課程の大学院生に共同研究
チームに参加してもらうことが多く、共同研究チームの一員として研究の場が
与えられる。大学・研究室の研究費と設備を使った研究であるため、大学の教
員の職務発明の一端を担うと考えられる。このため、学生にも秘密情報を守秘
する義務が生じると解釈できる。今回の新潟大の研究成果の秘密守秘の管理態
勢は、大学の秘密情報管理態勢に一石を投じたといえる。(丸山 正明=産学連
携事務局編集委員)