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『朝日新聞』2005年10月3日付 大学までの教育費「子が返すべきだ」母31%、父17% 子どもの経験を重視し見返りを求める意識が薄い父親と、しっかり就職後の 回収を求める母親。大学生の子どもの教育費に対する意識が、父と母の間でか なりずれがあることが、東京大社会科学研究所の佐藤香・助教授らの調査でわ かった。 佐藤助教授らは03年3〜5月にかけて、関東以北の私大6校を同年3月に 卒業した子どもを持つ親にアンケートを実施した。父親163人、母親273 人から回答を得た。 それによると、大学卒業までの学費を「就職してから子どもが返すべきだ」 と考える割合は、父の17%に対し、母は31%にのぼった。学費を奨学金や ローンでまかない、「就職してから子どもが返すべきだ」も、父の19%に対 し、母は30%が肯定する考えを示した。 さらに「子どもが勉強してくれないと学費が無駄になる」と考える割合も、 母は77%と、父の63%を大きく上回った。 調査結果をもとに福岡教育大の末冨芳(かおり)講師が、年収や学歴、職業 による回答の傾向について分析した。その結果、「大学までの学費・生活費は 親が負担するのが当然」と考える父親は、年収が多いほど割合が高かった。一 方、「奨学金やローンでまかない、本人が就職してから返すべきだ」の割合は、 最終学歴が大学・短大以上の母親よりも高卒の母親で高いことがわかった。 こうした傾向は、自由記述にもよく表れている。父親の記述には「大学生活 はまさに人生の中での経験」などと、大学でのさまざまな経験を重視するもの が目立った。一方、母親は「勉強するのはもちろんの事、おおいに生活を楽し んで充実した時間を過ごしてくれることが、その代金を払っている親の願い」 などと、「教育費=対価」との意識が透けて見える記述が目立った。 末冨講師は「子どもの教育費や大学の学費に多くの出費をしたのだから、勉 強させたり良い就職をさせたりして親としてもとをとらなくては、という意識 が母親の方に強い。ふだんから家計簿とにらめっこをしているため、考え方が 厳しいのではないか」と分析する。 |