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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年10月1日付

国立大資産、算定ミス700億円 修正後、171億円増


 全国の国立大学が昨年4月に国立大学法人化する際、ほぼすべての大学で国
から引き継いだ資産の評価額を過小あるいは過大に算定するミスがあり、その
総額が700億円近くに上ることが分かった。会計検査院の指摘を受けて文部
科学省が調べた。経理担当者の理解不足や点検が不十分だったという。89大
学が当初の資産を算定し直した結果、資産は計171億円増え、今年6月まで
に資本金額を修正した。

 法人化に伴って導入された企業会計は、大学の採算性を可能な限り高めて効
率的な運営をするのが狙い。しかし、その運営の前提となる資産が正しく評価
されていなかったことになる。

 会計検査院が東大や京大など比較的大規模な42大学を調べたところ、大半
の大学で算定ミスが見つかり、総額は約400億円に上った。

 校舎やキャンパスなどの不動産の価値を過小評価していたのは19大学。総
額は167億円で金沢大の37億円が最大。校舎の改修工事に見合った資産価
値を増やしていないことが多かった。一方、過大評価は17大学、総額123
億円で、最大は九大の54億円。取り壊した建物の資産価値を引き忘れるなど
していたという。九大は新キャンパスを建設中で特に間違えやすかったといい、
過小評価分も37億円あった。

 また、付属病院の診療機器などの高額物品については、過小評価していたの
が18大学(総額69億円)で、最大は九大(20億円)。過大評価は21大
学(総額43億円)で、京大の12億円が最も多い。年月の経過に合わせて資
産価値を減らす計算でのミスが目立った。

 文科省は検査院の指摘を受け、89の全国立大学に対象を広げて調査した。
その結果、算定ミスの金額は過大、過小の総額で700億円近いことがわかっ
た。

 資産の変動に伴う資本金の修正が最も大きかったのは名古屋工業大の26億
円で、東大13億円、京大11億円、信州大9億円、神戸大8億円と続いた。
経理担当者の単純ミスや理解不足のほか、例年より1カ月以上早い4月初旬に
資産の増減を国に報告することになり、点検が甘くなったとしている。

 同省は「法人化して初めての決算を作る前にミスがわかったので実害はなかっ
たが、正確な資産内容で法人の立ち上げができず、申し訳ない」(国立大学法
人支援課)と話している。

■資本金の修正が大きかった上位10大学

順位 大学 修正額(いずれも増加)

1 名古屋工業大学 26億3700万円

2 東京大学 13億7300万円

3 京都大学 11億8100万円

4 信州大学 9億5700万円

5 神戸大学 8億5600万円

6 北海道大学 7億6400万円

7 宮崎大学 7億5600万円

8 九州工業大学 7億5500万円

9 弘前大学 6億9600万円

10 山梨大学 6億9500万円