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『内外教育』2005年9月30日付 《第三者評価は事後評価か》 帝京科学大学顧問・瀧澤博三 わが国の高等教育の水準維持システムは、行政の責任と権限による公的なシ ステムと大学の自主性と自己責任による私的なシステムとの組み合わせで出来 ている。公的なシステムとしては大学設置基準に即した評価を行う設置認可が あり、その事後措置としての改善勧告、変更命令などの是正措置がある。 この公的システムは権力的な強制を伴うだけに客観性・自明性が求められる ため、設置基準の適用についても定量的な基準に重点が置かれ、抽象的・定性 的な基準は解釈の幅が大きく、とかく実効性に欠ける。一方、私的なシステム としては自己点検評価、第三者評価、結果の公表などがあるが、これらは行政 からは自立した大学および大学コミュニティーによる自主的なシステムであり、 大学人の相互信頼を基盤にして定性的な評価基準も有効に働くし、大学の特色 や個性に応じた評価に対応する柔軟性も持ち得る。 高等教育の質については、定量的な評価だけではその本質に迫ることはでき ず、そこに柔軟性に富む私的な評価システムの存在意義がある。大事なことは 評価における公私のバランスである。 今年1月の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」を受けて、文部科学省 では「事前・事後の評価の適切な役割分担と協調」の観点から評価システムの 在り方の検討を進めるとしているが、事前・事後というとらえ方は、第三者評 価を設置認可後のフォローアップのように考え、公的色彩を強めることになり はしないだろうか。第三者評価が認可後の設置基準順守の見張り役に甘んずる ようになっては私的なシステムとしての意義が薄れる。それは段階的な是正措 置等の手段を備える公的なシステムの役割であろう。 設置認可と第三者評価を事前・事後の関係として見ることは適切でない。公 的、私的の違いによりそれぞれ独自の視点と特色を持った評価システムとして 相補的な関係にあると考えるべきだろう。 |