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新首都圏ネットワーク

『河北新報』2005年9月25日付

山形大農学部産米 OBに産直収穫あり


 国立大の法人化を機に、山形大農学部(鶴岡市)が昨年始めた卒業生へのコ
メ産直が好調だ。初年度の昨年産米は完売し、1000万円近い販売実績を挙
げた。法人化に伴い、各大学は独自の収益確保に頭を悩ませているが、学部産
米の販売という農学部ならではのアイデアが、卒業生の「母校愛」を呼び起こ
した。本年産米も攻めの戦略で、売り込みに力を入れている。

 山大農学部は、作家の故藤沢周平の生誕地に近い金峰山のふもと、鶴岡市高
坂地区に24ヘクタールの付属農場を持つ。このうち水田は、大学としては国
内最大の10ヘクタールを誇る。はえぬき、ササニシキなどを年間40トン収
穫。本年産米は豊作が見込まれ、庄内平野では9月下旬の今が稲刈りの最盛期
だ。

 農場ではこれまで、研究用に作るコメを食管制度下では政府米として国に販
売。同制度廃止以降は学内消費や地域販売のほか、大学生協などへ売りさばい
てきた。

 昨年4月の独立行政法人化を機に、全国の同窓生へダイレクトメールを送り、
初の産直に取り組んだところ、4398通の発送に対し、1割に当たる442
人が購入した。リピーターも多く、延べ人数は1041人に上り、平均2.4
回の注文があった。

 価格は5キロ2000円、10キロ4000円、20キロ8000円とし
(送料、手数料は別)、販売実績は計975万円。別販売ルートの玄米やもち
米なども含めると、コメ全体で1365万円と、売り上げは法人化前の3割増
しになった。

 同封したアンケートでは「学生時代を思い出し懐かしい」「この機会に恩返
しできれば」など好意的な意見や励ましも多かった。一方、はえぬきはOBが
開発した品種であるにもかかわらず、14.5%が「案内で初めて知った」と
答え、市場での認知度不足を裏付ける結果も出た。

 本年産米は袋や包装を新調、贈答用などにも対応できるよう郵便振り込みで
の支払いも可能にし、いっそうの売り込みを図っている。

 萱場猛夫農場長(62)は「母校への愛情が良質米のイメージを高め、OB
とのきずなを強める好結果につながった。今後は農場ならではの低農薬や有機
栽培などの生産履歴情報をPRしながら、学生たちの流通販売の実習にも役立
てたい」と話している。