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新首都圏ネットワーク

nikkeibp.jp 2005年9月21日付

東工大産学連携本部、2007年度にTLO機能を統合へ


 東京工業大学産学連携推進本部は、2年後の平成19年度(2007年度)に承認
TLO(技術移転機関)である財団法人理工学振興会のTLO機能を統合する工程な
どを明らかにした。現在も産学連携推進本部は、理工学振興会に特許の実施権
のライセンス活動などを業務委託し、事実上は一体化して動いている。対外的
には産業界などに対しては産学連携推進本部が一元的な窓口を担当し、産学連
携のワンストップサービスを実現している。

 財団法人理工学振興会は1999年に文部科学省と経済産業省から承認TLOとして
承認された学外機関である。先行した株式会社形式ではなく財団法人にTLO機能
を持たせた形式の最初の承認TLOとして注目された。当時は東工大が国立大学で
あり法人格を持たないことから特許の出願・実施権ライセンスなどの契約主体
になれないことから、TLOを設立し特許などの知的財産の技術移転を担当した。
学外のTLOが知的財産の技術移転ビジネスを担うことで、大学が営利活動の影響
を過度に受けない役割を果たす意味もあった。

 その後、2004年に国立大学が独立行政法人(国立大学法人)となって法人格
を持ち、契約主体になれるようになった。この独法化前に、有力大学は知的財
産本部を設立し、産学連携活動に備えた。東工大は「産学連携推進本部」の名
称で知的財産本部を設けた。国立大学は独法化によって、教員の職務発明が従
来の個人帰属から大学帰属(機関帰属)に変更し、TLOが持つ特許が大幅に減少
する体制に移行した。

 現時点での既にTLOである理工学振興会のコーディネーター全員が、産学連携
推進本部のコーディネーターを兼務し、実務では一体化して産学連携活動に当
たっている。コーディネーターは東工大教員の研究成果をインタビューし、発
明に当たる部分を特許などの知的財産として成立するかどうかを評価し、特許
出願から実施権ライセンスの交渉、技術移転契約までの一連の活動を担当コー
ディネーターが一貫してみる態勢になっている。

 理工学振興会はTLO機能を産学連携推進本部に移した後は、元の財団法人に戻
るもよう。統合に対しては、理工学振興会が採用したコーディネーターの雇用
契約などをどのように解決していくかなどの実務面での詰めが残っている。

 東工大産学連携推進本部が学外のTLO機能を統合し一体化することは、他の大
学の関連TLOの在り方にも影響を与える見通しである。実体上は赤字のTLOが多
い中で、TLOの技術移転事業の健全化に一石を投じるだろう。(丸山 正明=産
学連携事務局編集委員)