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新首都圏ネットワーク

『科学新聞』2005年9月16日付

科技・学術審建議
「研究・開発評価指針」改定へ
研究者への適切評価に期待


 科学技術・学術審議会は、「文部科学省における研究及び開発に関する評価
指針」建議を取りまとめ、8日、同審議会の野依良治・会長が結城章夫・同省
事務次官に手渡した。今回の建議は、研究開発施策、研究開発課題、研究開発
を行う機関や研究者等の業績をどのように評価するのかを明らかにした。さら
に、小規模な研究課題などの評価を省略化など、共通的な事項についても具体
的に示したことがポイント。今回の指針改定によって、研究者の負担を減らし
つつ適切な評価が行われることが期待される。

具体的に評価の方向性示す

 今年3月に国の研究開発評価に関する大綱的指針が見直されたことを受けて、
(1)創造へ挑戦する研究者を励まし、優れた研究開発を見いだし、伸ばし育てる
評価の実施、(2)評価資源の確保や評価支援体制の強化、(3)効果的・効率的な
評価システムへの改革という、3つの方向性に基づいて、具体性を持たせた内
容に改定した。

 研究開発施策は、評価を適切に実施するため、施策の企画立案時に達成目標
を明確に設定するとともに、評価可能な定性的・定量的な指標の設定に努める。

 研究開発課題の評価は、競争的資金、重点的資金、基盤的資金による評価に
区分。研究開発の発展段階や特性、求めるべき効果・効用の明確化の度合い等
に応じて、適切な評価方法や項目を設定して実施する。

 競争的資金による課題の評価は、ピアレビューを原則とし、競争的資金の目
的・性格によって、科学的・経済的な観点のみならず、社会的・経済的な観点
も重視する。申請書の内容や実施能力の観点も重視。事前評価では、少数意見
も尊重し、斬新な発想や創造性等を見過ごさないように配慮。若手、産業界の
研究者等に対しても配慮。優れた成果が期待され発展が見込まれる課題は、切
れ目なく研究開発が継続できるよう、適切に評価を実施。

 重点的資金による課題は、その計画が研究開発施策を整合し方法が妥当か評
価。審議会等による外部評価を活用。大規模プロジェクトの場合、事前評価は
特に入念に評価し、中間評価は計画外事象も配慮。事後評価は、成否の要因分
析も行う。追跡評価を適時行う。

 基盤的資金による課題は、機関長の定めたルールに従い実施。必要に応じて
機関評価に活用し、機関における経常的な研究開発活動全体の改善に資する。

 機関等の評価は、機関運営面と研究開発の実施・推進面から実施。機関長は、
評価結果を機関運営の改善や機関内の資源配分に反映。評価結果を責任者たる
機関長の評価につなげる。

 研究者等の業績評価は、所属する機関の長がルールを整備し、責任を持って
実施。多様な活動に配慮。研究者を萎縮させず、果敢な挑戦を促すなどの工夫
が必要。

 研究開発型独立行政法人や国立大学法人については、指針を参考に法律で定
められている評価委員会が評価。新たな機関評価を行う義務は発生しない。

 また、研究開発の特性、規模に応じて、適切な範囲内で可能な限り評価の簡
略化・省略化を行い、評価活動を効率的に行う。研究開発課題・施策・機関と
いった階層構造の中で複数の評価を行う場合等では、可能な限り既存の評価結
果を活用する。

 質を向上させるため、施策・課題ごとに経費を確保するとともに、評価人材
の育成・確保のための総合的な取り組みを推進。調査分析の充実と手法の高度
化のための調査・分析を実施。データベースの構築・活用、電子システムの導
入等を進める。