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新首都圏ネットワーク

『読売新聞』2005年9月20日付

大学「ブランド品」続々、少子化でPR戦略


 大学が、校名を冠した「ブランド品」の販売に力を入れている。少子化で大
学間競争が激化していることなどから、大学のPRに役立てようという戦略だ。

 東京大が昨年11月から売り出しているのは、泡盛「御酒(うさき)」(7
20ミリ・リットル、税込み4200円)。戦前の泡盛づくりに使われていた
“幻の黒こうじ菌”が1998年、大学に保管されているのが見つかり、この
菌を使って沖縄県の酒造会社がつくった。ラベルには東大のロゴが入っており、
東大本郷キャンパスの売店で販売。フルーティーな香りが好評で、これまでに
約7000本を売り上げた。

 神戸大は今年5月から、付属農場で研究用に育てた但馬牛を「神戸大学ビー
フ」として、「日本橋三越本店」(東京都)で売り出し始めた。口の中で溶け
やすい脂肪を持つ但馬牛を厳選、最適の霜降り肉になるよう交配を重ね、最高
級品は100グラム3000円〜5000円。一般市場の最高級品とほとんど
変わらない。

 同店によると、月2、3頭分を入荷してもすぐに売り切れる人気で、「味に
加え、『大学が作っている』という安心感が食の安全に敏感な消費者に受ける
のでは」としている。

 世界で唯一、マグロを卵から成魚にまで育て上げる養殖技術を持つ近畿大が
販売しているのは、「近大マグロ」。実験場のゆったりしたいけすの中で、水
銀の残留濃度までチェックしたイワシやサバなどを与えて育てた高級品。「研
究費を考えると赤字」(同大水産研究所)だが、大学のPRのため、昨年9月
から関西のデパートやレストランに出荷を続けている。

 このほか、同志社大はOBが経営するワインメーカーと提携し、昨年11月
から大学のロゴ入りワインを販売。早稲田大では2007年の創立125周年
に向けて、角帽をかぶったクマのキャラクター「WASEDA BEAR」を
プリントしたTシャツや文具を売っている。

 各大学がPRに躍起になるのは、「大学全入時代」が07年度に到来すると
予測されるため。特に昨年4月に法人化した国立大は「少しでも自分たちの手
で利益を上げたい」(国立大関係者)との思惑もある。

 文部科学省幹部は「研究費を負担している納税者に、どのような研究をして
いるのかを説明する一助にもなる。こうした取り組みは今後さらに増えるだろ
う」と予想している。