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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年9月15日付

大学の質、「世界標準」で比較 今秋、ユネスコなど指針


 大学にもグローバル化の波が押し寄せてきた。留学生が相互に行き交い、海
外分校の設置も進む中で、大学が提供する教育の質を保証するための世界的な
ネットワークをインターネット上に構築し、各国の大学を比べられるようにす
る動きが始まった。「世界標準」が定まることで、国内でも生き残りをかけた
厳しい競争が続く日本の大学は、国際的な比較の目にもさらされることになる。

 世界標準となるのは、「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関する
ガイドライン」。ユネスコ総会と経済協力開発機構(OECD)理事会で10
月と11月にそれぞれ採択が予定されている。このガイドラインは、各国政府
や大学が取り組むべき指針を示す。

 具体的には、加盟各国に対して、「大学の国際的な認証評価制度の構築」を
呼びかける。いまの大学の認証評価制度は、それぞれの国で第三者機関が設置
されて、大学に立ち入って教育内容のチェックが行われているが、日本に限ら
ず将来的には国際機関のもとで実施することを構想している。

 ガイドラインには、各大学には「教育内容が国際的に信頼され通用するもの
か」や「学位に関する情報の提供」などを促す内容が盛り込まれている。

 数年以内には各国が協力して、世界中の学生がインターネットで各大学の教
育内容をチェックできる「情報サイト」を構築することを目指している。

 文部科学省によると、この情報サイトができると、各大学の教育内容や、授
与される学位の中身、その大学が第三者機関からどのような評価を受けている
かなどが一覧できるようになるという。

 いまは、それぞれの国や大学で学位を取るのに必要な年限や単位数が異なる
うえ、同じ中身の学位でもその名前すら違う場合がある。

 いままでは、各国の学生は、それぞれの大学のサイトを調べるなどして留学
先を選ぶしかなかったが、世界的情報サイトがつくられると、ここを窓口にし
て「世界標準」に照らし合わせながら、候補の大学を比べることができるよう
になる。

 いかに優秀な留学生を受け入れるかは、国内の各大学の関心の的だ。単位互
換や共同研究などについて、日本の大学が海外の大学と結ぶ交流協定がこの5
年間で倍近い1万1292件にのぼった。海外拠点を置く大学などは60を超
えており、広報拠点に据えて優秀な留学生を確保しようとする各大学の思惑が
うかがえる。ある大学関係者は「大学が受けた評価を英訳してサイトにのせる
のは大変な作業だろうが、国際競争力をつけて生き残るにはそんな泣き言は言っ
ていられない」と話す。

 世界的ネットワークがつくられるきっかけになったのは、米国やオーストラ
リアなどで高等教育の実質を備えていないのに「学位」を乱発する大学や大学
院が問題化したためだ。このため、03年10月のユネスコ総会で国際的な質
保証に取り組むことが決議された。

 この議論には日本も積極的に加わっており、文科省は世界的ネットワークの
構築を控え、まず国内の情報サイトを立ち上げる方針だ。