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新首都圏ネットワーク

『科学新聞』2005年9月9日付

文科省概算要求
科研費9.5%増の9104億円

第3期基本計画の初年度に

 文部科学省は8月31日、財務省に平成18年度予算概算要求を提出した。対前
年度比9.4%増の6兆2746億2600万円の予算を要求。そのうち、3%削減という
厳しい概算要求基準になった科学技術振興費は9104億2100万円と、対前年度比
9.5%(786億4000万円)増の要求となった。しかし、全省庁合わせての特別枠
は1000億円。年末の予算編成に向けた財務省との折衝は厳しいものになると予
想される。

 第3期科学技術基本計画の初年度となることから、科学技術関係では、(1)科
学技術関係人材の養成・確保、(2)基礎研究の充実とイノベーションの創出、
(3)国家基幹技術の推進、(4)国際活動の戦略的推進という4つの柱を立てた。

<科学技術関係人材の養成・確保>

 優れた研究者確保で689億2000万円(73億3700万円増)。若手研究者の活躍促
進のため、科研費の若手研究等を充実(306億1300万円)するとともに、日本学
術振興会の海外特別研究員(17億8100万円)や特別研究員(158億3900万円)を
充実する。また女性研究者の活躍促進のため、出産・育児等による研究中断か
らの復帰支援(2億1800万円)、科学技術分野で活躍する女性研究者のロール
モデルを示したりシンポジウムを開催する(4700万円)などを新規要求。

 社会のニーズに対応した人材養成は612億1100万円(74億9800万円増)。21世
紀COEプログラムや魅力ある大学院教育イニシアティブなどを充実させるほ
か、先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム(10億円)やキャリアパス
多様化推進事業(7億4600万円)を新規で盛り込む。

 スーパーサイエンスハイスクールやサイエンス・パートナーシップ事業など、
次代を担う人材の裾野を拡大するため、178億1700万円(10億1600万円増)を要
求。国民に科学技術を分かりやすく伝えるなど、社会との関わりのための予算
として、88億3800万円(5億7400万円増)。

<基礎研究の充実とイノベーションの創出>

 大学・大学共同利用機関等の基礎研究のビッグプロジェクトに963億1200万円
(34億2900万円増)。大学及びTLOにおける知的財産の創造・保護・活用を
総合的に支援するため、59億5500万円。マッチングファンドの充実やイノベー
ション創出につながる共同研究へのFS支援など、産学官連携の推進のため
316億3200万円。地域科学技術振興予算は53億3000万円増額して、293億4500万
円を要求。

 競争的研究資金は全体で5.3%増(191億100万円)の3799億5100万円を要求。
科学研究費補助金、戦略的創造研究推進事業、科学技術振興調整費をそれぞれ
3.7%増額するほか、新たな競争的資金として、産学共同シーズイノベーション
化事業(30億円)を創設する。

 分野別では、ライフサイエンス855億8600万円、情報通信321億9900万円、環
境874億2000万円、ナノテク・材料308億8100万円、核燃料サイクル・原子力
2852億5300万円、宇宙・航空2002億6500万円、南極観測・海洋地球科学技術
521億3100万円、地震・防災181億3400万円、新興・融合分野153億2200万円、安
全・安心のための科学技術286億3200万円。

 また、研究基盤強化のため、先端計測分析技術・機器開発プロジェクト
(119億3900万円)など、443億5100万円を要求している。

<国家基幹技術>

 統合地球観測・監視システム276億6500万円、宇宙輸送システム536億2900万
円、高速増殖炉サイクル技術358億6900万円、核融合エネルギー技術70億7400万
円、海洋探査システム285億9700万円、最先端・高性能汎用スパコン開発40億
5100万円、X線自由電子レーザーの利用開発32億9300万円。

<国際活動>

 科学技術の国際活動を戦略的に推進するため、179億4300万円を要求。特に、
アジア諸国とのパートナーシップを強化するため、アジア向けに科学技術・学
術情報の発信機能を強化(1億900万円)や中国にターゲットを絞ったアジア科
学技術情報基盤強化(2億9500万円)を、新たに予算化するほか、アジア諸国
との共同研究(5億7000万円)やアジア・アフリカとの研究者交流等(10億
5400万円)を推進する。

<大学予算>

 大学改革を推進するため、六年制薬学教育支援プログラムや実践的総合キャ
リア教育推進プログラムを新たに要求。また、特色GPや現代GP、大学教育
の国際化推進プログラムなどを充実するなど、71億1700万円増の603億7900万円
を要求。

 国立大学法人への運営費交付金は、53億9400万円増の1兆2371億2300万円を
要求。効率化計数によって運営費交付金が減らされるものの、特別教育研究経
費や特殊要因経費(退職金など)、新規分や先端分野の大学院充実による定員
増などによる運営費交付金の基礎額増などによって、一応の増額要求になった。
施設整備予算は585億2900万円(35億3400万円増)の他、施設費交付事業86億円
が要求された。

 私立大学への補助金は、80億円増の3372億5000万円。一般補助は19億7700万
円増の2213億5600万円、特別補助が39億7300万円増の388億3300万円、教育研究
高度化推進特別補助が20億5000万円増の770億6100万円。施設・設備の高度化・
高機能化のための補助金は、25億円増の274億8000万円。