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『北日本新聞』社説 2005年8月25日付

2005年 8月25日/北日本新聞

国立大の決算/戦略持った予算運用を


 法人化後初めてとなる国立大学の決算が公表された。全八十九大学のうち八
十八大学が「黒字」で、総利益は計約千百億円となったが、初の決算には旧国
立大時代からの未収授業料の「債権」や付属施設の備品を引き継いだ特殊事情
があり、経営努力によって生み出されたのは約五十四億円にとどまるとされる。
あらためて大学経営の難しさが裏付けられたといえよう。

 県内三大学は、富山医薬大が利益十億六千百万円で全国三十六位、富山大が
同一億九千二百万円で六十二位、高岡短大が同九千六百万円で七十八位だった。
独自収入となる付属病院があり、企業との共同研究がしやすい理科系の研究部
門を持つ大学ほど利益が多いという全国の傾向が反映された。

 三大学は再編統合し十月に新・富山大として発足する。学長になる西頭徳三
氏はこのほど八学部の経営を担う理事予定者六人を決め、発表した。国立大学
は十六年度からの法人化により、収入の約半分を占める国からの運営費交付金
が毎年1パーセントずつ削減されることになっている。経費削減と外部資金導
入増が迫られている。

 新・富山大は、新大学としての独自色を打ち出すため「大学戦略室」の設置
を決めた。西頭学長が室長を兼務し、産学連携での地域貢献事業の計画や、高
度な研究テーマ設定へ向けた改革を進めていくことになっているが、文科系学
部の外部資金獲得などの課題を克服しなければならない。予算を戦略的に配分
するなどの工夫で、特色をアピールしてもらいたい。

 経費節減と収入増のためのさまざまな取り組みが報告されている。昼休みの
消灯やコピー紙の両面使用の徹底以外に、付属病院がある大学では入院日数の
短縮と病床稼働率の向上を図るのは今や常識となっている。富山医薬大もこの
部門で予想を約一億六千万円上回る利益を上げた。

 土地・建物・研究施設などの資産に恵まれ、外部からの研究委託が多いのは、
旧帝大など一部に過ぎない。地方を中心に今後の財政状況は苦しくなるとみら
れている。経費削減のため職員給与を切り下げるなどの思い切った対応もある
が、優秀な研究者育成の妨げになる恐れがある。知恵を出し、より効率的な予
算運用を心掛けてほしい。